香川県高松市で有限会社から株式会社への変更登記をお考えの方へ。有限会社と株式会社の商業登記上の大きな違いである「代表取締役の氏名表示義務」について、司法書士が実務のポイントを詳しく解説します。
【司法書士が解説】同一管轄内での本店移転登記|定款変更の有無で異なる手続きとは?

会社の本店を移転する場合、法務局での「本店移転登記」が必要になります。特に、同じ市区町村内など同一法務局の管轄内での移転であっても、登記の内容や手続きは一律ではありません。
重要なのは、「定款の記載内容がどこまで詳細か」と、「移転先が定款の記載範囲内かどうか」です。これによって、定款変更の要否や、取締役会決議・株主総会決議の必要性が変わってきます。
本記事では、司法書士の視点から「同一管轄内での本店移転登記」に絞って、分かりやすく手続きの違いや注意点を解説します。これから移転登記を検討されている企業担当者や経営者の方にとって、参考になる内容となっています。
目次
- 本店移転登記とは?
- 同一管轄内の移転=住所変更とは限らない
- 定款変更を伴わない本店移転
- 定款変更を伴う本店移転
- 手続き上の違いと注意点
- まとめ
1. 本店移転登記とは?

「本店移転登記」とは、会社の本店所在地を移転した場合に、法務局に届け出る登記手続きのことです。これは会社法第911条や商業登記規則に基づき、必ず行う必要があります。
移転には大きく分けて3パターンがあります:
- 同一法務局管轄内での移転(今回のテーマ)
- 管轄外への移転
- 海外など極端なケース
このうち、同一管轄内での移転は一見「軽微な住所変更」と思われがちですが、実は定款に記載された本店所在地の表現によって、手続き内容が大きく異なります。
2. 同一管轄内の移転=住所変更とは限らない
たとえば、香川県高松市内で本店を「高松市〇〇町」から「高松市△△町」へ移すとします。地理的には同じ市内であり、登記上の管轄も同一の法務局(高松地方法務局)内となります。
しかし、重要なのは**定款に「どの範囲で本店所在地が書かれているか」**です。
- 例1:「本店は高松市内に置く」→ 市内であれば定款変更不要
- 例2:「本店は高松市〇〇町〇番〇号に置く」→ 別の町への移転には定款変更が必要
- 例3:「本店は高松市内に置く」→高松法務局管轄は香川県内だが、観音寺市に本店移転する場合、転換変更が必要
このように、「定款の記載」が手続きの分かれ道になります。
3. 定款変更を伴わない本店移転
定款に「本店は高松市内に置く」といった最小行政区(市区町村)までしか記載していない場合、その範囲内での移転であれば、定款変更は不要です。
この場合の決定権限は、次のように定められています。
- 取締役会設置会社の場合:取締役会の決議で決定可能
- 取締役会非設置会社の場合:取締役の過半数の一致による決定
その後、必要書類(取締役会議事録や登記申請書など)を添えて、法務局へ登記申請を行えば完了です。
4. 定款変更を伴う本店移転

一方、定款に「高松市〇〇町」と具体的な町名まで記載している場合に、他の町へ移転するとなると、定款を変更する必要があります。
定款変更には、会社法上、株主総会の特別決議(出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。
この場合の手続きは以下の通りです:
- 株主総会の開催(定款変更を議題とする)
- 定款変更決議(特別決議)
- 移転先の住所を取締役会または取締役が決定
- 必要書類を準備し、登記申請
ここで注意が必要なのは、「定款変更決議」と「本店移転決議」が別個の決議事項として扱われることです。議事録を作成する際も、それぞれを明確に記録しておくことが大切です。
5. 手続き上の違いと注意点

特に実務上注意しておきたいのは、「定款を変更するかどうか」で準備期間や登記スケジュールに影響が出るという点です。急ぎの移転が必要な場合は、定款の記載を確認し、必要に応じて株主総会の開催準備を前倒しで行うといった対応が求められます。
6. まとめ
同じ法務局の管轄内であっても、定款の記載内容によって必要な手続きは大きく変わります。市内での引っ越し程度に思えても、定款に細かく住所が記載されていれば、株主総会を開いて定款を変更しなければならないケースもあるのです。
今後本店移転を予定している企業は、まずは定款の本店所在地の記載を確認しましょう。そのうえで、必要な決議や手続きを計画的に進めることで、登記手続きもスムーズに進みます。
次回は、「最小行政区を超えて本店を移転する場合」に焦点を当て、定款変更と株主総会決議の重要性についてさらに詳しく解説していきます。お楽しみに。

変更登記
香川県・高松市で有限会社の役員変更登記をお考えの方へ|有限会社と株式会社の違いを司法書士が解説
香川県高松市で会社設立登記や会社変更登記を検討している方必見。有限会社と株式会社の違いや、現在の有限会社制度の扱いを司法書士がわかりやすく解説します。経営者様の疑問をスッキリ解決!
(組織変更)許認可事業を営む合同会社が株式会社に組織変更する際の落とし穴
合同会社から株式会社に組織変更する場合、通常は「組織変更登記」を行えば済むと考えがちですが、許認可を要する事業を営んでいる会社では注意が必要です。筆者が実際に経験した、行政の要請によって組織変更手続きが使えなかったケースをもとに、許認可事業者が知っておくべき落とし穴を解説します。
【会社法】募集株式の発行とは?新株発行と自己株式処分の違いをわかりやすく解説!
資金調達や資本政策を行う際、会社が採用する代表的な手法のひとつが「募集株式の発行」です。しかし、実務では「新株発行」と「自己株式の処分」が混同されることが多く、それぞれの法的性質や資本金への影響、登記上の違いを正しく理解しておくことが重要です。本記事では、会社法に基づく募集株式の発行について、基本的な仕組みから、新株発行と自己株式の処分の違いまで、わかりやすく解説します。特に中小企業の経営者や実務担当者、司法書士試験を目指す方にも有益な内容となっています。