【第2回】役員変更登記を完全解説!就任・辞任・再任の違いと必要書類

2025年06月17日

「役員が変わったのに、登記って必要なの?」「辞任って届出だけでいいんじゃないの?」そんな疑問を持ったことはありませんか?会社経営の現場では、代表取締役の交代や取締役の退任など、役員の人事に関する変更がたびたび発生します。しかし、これらの変更は必ず法務局に登記申請する必要があるため、注意が必要です。

この記事では、「役員変更登記とは何か」「就任・辞任・再任の違い」「各パターンで必要となる書類」「登記を怠った場合のリスク」などについて、司法書士の実務視点でわかりやすく解説します。

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【目次】

  1. 役員変更登記とは?
  2. 就任・辞任・再任の違いと登記要件
  3. 各ケースにおける必要書類一覧
  4. 登記しないとどうなる?リスクと過料について
  5. 登記申請のタイミングと期限の考え方
  6. まとめ:役員変更登記は段取りが命

1. 役員変更登記とは?

 「役員変更登記」とは、取締役、代表取締役、監査役など会社の役員構成に変動があったときに、それを登記簿に反映させる手続きのことです。株式会社では、登記事項に該当する役員については法務局への登記が義務付けられています(会社法第911条、第915条など)。

 変更内容が発生した日から原則2週間以内に申請する必要があり、これを怠ると過料の対象となります。

2. 就任・辞任・再任の違いと登記要件

 役員変更といっても、実際には「就任」「辞任」「再任」など複数のパターンがあります。それぞれの違いと登記の要件を整理しておきましょう。

就任(新たに役員になる)

新任の役員が会社に加わることを「就任」といいます。登記に際しては、本人の就任承諾が必要であり、登記申請の際には「就任承諾書」や「印鑑証明書」などが求められます。

※ 取締役が代表取締役を兼ねる場合は、「代表取締役の選定に関する議事録」も必要です。

辞任(自ら退く)

 役員が自らの意思で退任するのが「辞任」です。取締役が辞任する場合、原則として株主総会の承認は不要で、辞任届の提出だけで足ります。ただし、代表取締役の辞任は後任者の選任を伴うため、慎重に手続きする必要があります。

再任(任期満了後の再任)

 取締役や監査役には任期があり、任期満了後に再び同じ人物が就任することを「再任」といいます。再任は就任と似ていますが、同じ人物が継続して役員になる場合でも、改めて登記が必要です。

3. 各ケースにおける必要書類一覧

 ここでは、実務上よくあるパターン別に、必要書類をまとめます。

 注意点として、代表取締役の変更は「会社実印の変更届」や「印鑑カードの再交付」など、登記以外にも対応が必要になることが多いため、スケジュールには余裕を持たせましょう。

4. 登記しないとどうなる?リスクと過料について

 役員変更登記を怠ると、以下のようなリスクがあります。

  • 法務局からの過料処分(最大100万円)
  • 銀行や取引先からの信用低下
  • 新規契約や融資が遅れる可能性
  • 補助金・助成金の申請時に不備扱いされる

 実際に、何年も役員変更登記をしていなかった会社が、融資や補助金の申請で「登記が古すぎて不信感を持たれた」というケースも少なくありません。

5. 登記申請のタイミングと期限の考え方

 登記申請の期限は「就任・辞任・再任があった日から2週間以内」です。たとえば、株主総会が5月1日に開催され、そこで取締役が新任された場合、5月15日までに登記申請を完了する必要があります。

 ただし、申請書類に不備があると受理されないため、書類の準備・押印・確認には十分な時間を確保することが大切です。

6. まとめ:役員変更登記は段取りが命

 役員変更登記は、「誰が・いつ・どのように役員になった(あるいは退任した)」のかを、公に示すための重要な手続きです。

✅ 変更のあった日から2週間以内に申請
✅ 就任・辞任・再任で必要書類が異なる
✅ 登記を怠ると過料や信用低下のリスクあり

 特に代表取締役の交代がある場合は、法務局だけでなく銀行や行政への手続きも並行して進める必要があり、全体の段取りが鍵となります。

 次回(第3回)は、「目的変更登記」について、追加・変更・削除それぞれのパターンと、定款変更との関係について解説します。

変更登記

資金調達や資本政策を行う際、会社が採用する代表的な手法のひとつが「募集株式の発行」です。しかし、実務では「新株発行」と「自己株式の処分」が混同されることが多く、それぞれの法的性質や資本金への影響、登記上の違いを正しく理解しておくことが重要です。本記事では、会社法に基づく募集株式の発行について、基本的な仕組みから、新株発行と自己株式の処分の違いまで、わかりやすく解説します。特に中小企業の経営者や実務担当者、司法書士試験を目指す方にも有益な内容となっています。

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また、移転先が現在の法務局の管轄外にある場合には、さらに手続きが複雑になります。