【第3回】なぜ清算人登記で「定款」が必要なのか?(株式会社編)司法書士が詳しく解説
株式会社が解散し、清算人を登記する際には「定款のコピー」を添付する必要があります。しかし、なぜ解散登記時に定款確認が求められるのか、他の登記では不要なのに清算人だけ例外なのか、実務でも誤解が多い部分です。本記事では、司法書士が清算人登記と定款添付の理由を体系的に解説します。

会社を解散すると、事業運営は停止し、財産整理を行う「清算人」が必要になります。しかし清算人は誰がどうやって決めるのか、定款・取締役・株主総会のどれが優先されるのか、誤解が多いポイントです。本記事では、清算人の定め方を司法書士の実務に基づいて徹底解説します。
目次
1. 清算人を決めるルールはなぜ重要なのか

清算人は、解散後の会社の財産管理・債務弁済・分配など重要な手続きを担当します。そのため、誰が清算人になるのかを明確にしておかないと、次のような問題が発生します。
そのため、「どう決めるか」のルールを会社法は明確に定めています。
2. 清算人の決定順序の大原則(会社法の規定)

会社法では、清算人の選任について次の順序が定められています。
つまり「定款 → 総会 → 法定」という順序が鉄則です。
3. ① 定款で定めがある場合(最優先)

定款は会社の憲法のようなもので、清算人について次のような定めが置かれることがあります。
● 定款における定めの例
定款に規定がある場合、株主総会で別の清算人を選ぶことはできません(ただし定款変更を行う場合は別)。
● 実務上の注意
定款の内容確認は、解散手続きの初期段階で必須です。
4. ② 株主総会での選任(最も一般的)

定款に清算人の記載がない場合、通常は株主総会で選任します。
● 株主総会で選ぶメリット
● 決議方法
● 実務ポイント
清算人登記は解散の日から 2週間以内 に行う必要があるため、総会決議は迅速に実行する必要があります。
5. ③ 法定清算人(最終の取締役)

定款にも総会選任にも該当しない場合、自動的に最終の取締役が清算人となります。
● 法定清算人となるケース
● 法定清算人の問題点
特に「取締役が複数いる有限会社で、1名のみを清算人にしたい」場合など、法定清算人になるのか選任清算人なのかで混乱することが多いです。(※このテーマは第4回で詳しく扱います)
6. 株式会社・合同会社・有限会社それぞれの注意点
● 株式会社
● 合同会社
● 有限会社
7. 清算人が複数いる場合の扱い

複数清算人を置く場合、次のような点に注意が必要です。
複数置くことで透明性が増し、相続会社・親族会社での紛争予防にも役立ちます。
8. 実務でトラブルになりやすいケース
以下の点は実務で非常によく問題になります。
● 清算人を選任したつもりが、実は法定清算人と扱われるケース
● 定款規定と矛盾した清算人選任
● 取締役が複数いる会社で1名のみ清算人にしたい場合
第4回で、実際の登記トラブル例を交えて詳しく説明します。
9. FAQ(よくある質問)

Q1. 清算人は必ず株主が選ばれないといけませんか?
→ いいえ。株主総会で選任されるのは「選任権」であり、就任する人は外部の人物でも問題ありません。
Q2. 清算人を途中で変更できますか?
→ 株主総会の決議で変更可能です。変更登記も必要です。
Q3. 清算人が拒否した場合は?
→ 選任は辞退できます。辞任後の追加選任を株主総会で行う必要があります。
Q4. 清算人を複数置くメリットは?
→ 不透明な財産処理を避けたい場合に有効です。親族間の会社で特に使われます。
Q5. 清算人が不在の場合、解散は無効になりますか?
→ 無効にはなりませんが、法定清算人が自動的に就任します。
10. まとめ
清算人の決め方は「定款 → 株主総会 → 法定清算人」という明確な優先順位があります。
しかし実務では、定款確認不足や議事録の書き方の不備により、「選任したつもりが実は法定清算人だった」というケースも多く見られます。
特に有限会社や家族会社の場合、手続が簡易な分だけ誤解も生まれやすく、トラブルが起きやすい領域と言えます。
解散手続きをスムーズに進めるためには、早い段階で清算人の決定方法を確認し、必要な書類を整えることが重要です。

株式会社が解散し、清算人を登記する際には「定款のコピー」を添付する必要があります。しかし、なぜ解散登記時に定款確認が求められるのか、他の登記では不要なのに清算人だけ例外なのか、実務でも誤解が多い部分です。本記事では、司法書士が清算人登記と定款添付の理由を体系的に解説します。
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