取締役が複数いる有限会社(特例有限会社)で会社を解散する場合、「清算人は取締役全員なのか?」「一部の取締役だけを清算人にできるのか?」という点は、実務でもトラブルが非常に多い論点です。本記事では、会社法の規定と登記実務の両面から、清算人選任の可否と手続きのポイントを司法書士が徹底的に解説します。
【第5回】取締役が複数いる有限会社の清算人選任 ― 「一部の取締役だけ」を清算人にできるのか?司法書士が徹底解説

取締役が複数いる有限会社(特例有限会社)で会社を解散する場合、「清算人は取締役全員なのか?」「一部の取締役だけを清算人にできるのか?」という点は、実務でもトラブルが非常に多い論点です。本記事では、会社法の規定と登記実務の両面から、清算人選任の可否と手続きのポイントを司法書士が徹底的に解説します。
■ 目次
- 有限会社(特例有限会社)の清算人制度の基本
- 「取締役が複数いる場合」の法定清算人の原則
- 一部の取締役だけを清算人に選べるのか?
- 清算人を一部の取締役に限定する場合の要件
- 必要な添付書類(定款は必要?)
- 実務で非常に多い補正事例
- 清算人を1名だけにした場合の実務上のメリット・デメリット
- 清算人選任後に必要な手続き
- FAQ
- まとめ
1. 有限会社(特例有限会社)の清算人制度の基本

有限会社(特例有限会社)は、今では新設できない旧有限会社の制度を引き継いだ法人形態です。
特例有限会社では、機関設計が株式会社よりもシンプルで、
- 取締役会は存在しない
- 清算人会制度も存在しない
- 清算人の規定も株式会社より簡略
という特徴があります。
これらの構造上の違いが「清算人の決定方法」に大きく影響します。
2. 「取締役が複数いる場合」の法定清算人の原則

有限会社では、定款や株主総会で別途定めない限り、会社法478条・479条の準用により
法定清算人 = 解散時の取締役全員
となります。
例:取締役が2名
→ その2名が自動的に法定清算人
例:取締役が3名
→ 3名全員が法定清算人
これは、有限会社には「清算人会計制度」が存在しないため、"代表者だけが清算人になる"という構図がないためです。
3. 一部の取締役だけを清算人に選べるのか?

結論:選べます(可能)。ただし株主総会決議が必須。
例)
- 取締役A・Bの2名
→ Aだけを清算人にしたい - 取締役が3名
→ 1名だけを清算人にしたい - 外部の専門家を1名だけ清算人にしたい
これらはすべて可能です。
ただし、
法定清算人ではなく「選任清算人」になるため、株主総会の決議が必要。
この点を誤ると、登記官からの補正(やり直し)の原因になります。
4. 清算人を一部の取締役に限定する場合の要件

以下の2点が必須です。
(1)株主総会での「清算人選任決議」
有限会社では、清算人の選任は原則として株主総会(社員総会)で行います。
※有限会社では「社員=出資者=株式会社でいう株主」と同義。
決議方式は通常決議(過半数)で可能です。
(2)定款に清算人に関する特別規定がある場合は、それに従う
有限会社でも定款に次のような規定が置かれていることがあります。
- 清算人は代表取締役とする
- 清算人は社員の中から選ぶ
- 清算人の選任は特別多数を要する
こうした規定がある場合、株主総会はその規定に従わなければなりません。
5. 必要な添付書類(定款は必要?)
清算人を「一部の取締役だけ」にする場合の添付書類は次のとおりです。
▼ 添付が必要なもの(箇条書き)
- 株主総会議事録(清算人選任決議)
- 解散事由が生じたことを証する書面
- 清算人の就任承諾書
- 印鑑証明書(清算人が個人の場合)
▼ 定款は必要か?
→ 多くの場合、必要になります。
理由:
- 法定清算人(取締役全員)ではないため
- 定款に清算人に関する規定がある可能性があるため
- 登記官はその有無を確認する必要があるため
ただし例外的に「定款に清算人の規定が存在しないと明らかな場合」は不要となることがあります。
(ただし現実には法務局ごとに運用差があり、請求されるケースが多いです。)
6. 実務で非常に多い補正事例

有限会社の清算人登記で、特に誤解が多いのが以下のケースです。
● 補正①
「代表取締役だけを清算人にして自動的に法定清算人になる」と誤解
→ 有限会社では誤り
→ 法定清算人は「取締役全員」
→ 一部だけにするには株主総会決議が必須
● 補正②
株主総会で選任したのに、定款を添付していない
→ 補正通知が届く典型例
● 補正③
取締役2名中1名だけを清算人にしたのに、議事録の記載が不十分
例:
「清算人にAを選任する」とだけ記載
→ "なぜ取締役Bが清算人でないのか" が不明確 → 補正
● 補正④
清算人が複数選ばれているのに代表清算人を選定していない
複数名の清算人がいる場合は代表清算人の選定が必要です。
7. 清算人を1名だけにした場合のメリット・デメリット

▼ メリット(箇条書き)
- 手続き・署名押印が簡略化される
- 銀行対応や資産処分がスムーズ
- 責任範囲が明確でトラブルになりにくい
▼ デメリット(箇条書き)
- 他の取締役との利害対立が生じる可能性
- 1名に負担が集中(税務・債務処理など)
- 場合によっては背任・不当処分と疑われやすい
8. 清算人選任後に必要な手続き

清算人となった者は、次のような業務を行います。
▼ 清算人の主な職務(箇条書き)
- 財産目録・貸借対照表の作成
- 債権取立て(売掛金など)
- 債務の弁済
- 不動産・動産の処分
- 未払い給与などの対応
- 税務申告(解散確定申告・清算申告)
- 銀行口座・契約関係の処理
- 残余財産の分配
- 清算結了の登記申請
特に、金融機関は「清算人の資格証明書(資格証明書発行登記)」を求めることが多いため、登記後も実務が発生します。
9. FAQ(よくある質問)

Q1. 取締役2名の有限会社で1名だけを清算人にすることはできますか?
A. はい。可能です。ただし 株主総会での清算人選任決議が必須 です。
Q2. 取締役ではない人物を清算人に選べますか?
A. 可能です。外部の専門家(司法書士・税理士等)でも選任できます。
Q3. 清算人が1名の場合でも代表清算人は必要ですか?
A. 清算人が1名だけなら代表清算人の選定は不要です。
Q4. 定款は必ず添付が必要ですか?
A. "法定清算人"でない場合、添付が必要となることが多いです。
Q5. 清算人選任決議は特別決議ですか?
A. いいえ。通常決議(過半数)で足ります。
10. まとめ
有限会社(特例有限会社)で取締役が複数いる場合、
**【法定清算人】
→ 取締役全員(自動)**
**【一部の取締役だけを清算人にしたい場合】
→ 株主総会で清算人選任決議が必要
→ 定款添付が求められるケースが多い**
という点が最重要です。
登記実務では、議事録記載の不備や添付書類の不足により補正になる事例が非常に多く、有限会社の清算は今でも注意すべきポイントが多い分野です。
不安があれば、専門家に相談することを強くおすすめします。

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