取締役が全員辞任・死亡し「取締役ゼロ」の状態になると、会社は意思決定ができない"機関不全"に陥ります。本記事では、裁判所の招集許可・仮取締役選任という法定手続から、最高裁判例に基づく「株主全員同意による招集」という即時対応まで、登記実務に基づき分かりやすく解説します。
【第5回】本店移転登記の完全ガイド|同一市区町村内・管轄外への移転手続きの違いとは?

「オフィスを移転したけど、登記って必要?」「本店を別の市に移すけど、何か手続きがあるのか?」——法人の住所を変更した際に必要になるのが本店移転登記です。
登記上の本店とは、会社の主たる事務所(所在地)を指し、会社のアイデンティティを示す重要な情報の一つです。法人の名刺や契約書、銀行手続きなどにも使用されるため、住所が変わったら登記変更が不可欠です。
本記事では、本店移転の登記が必要な理由、同一市区町村内と管轄外移転の違い、定款変更の要否、必要書類や登録免許税まで、司法書士の視点からわかりやすく解説します。
「会社 住所 変更 登記」「本店移転 方法」「法人登記 住所変更」などで検索された方にとっても、有用な情報をまとめています。
【目次】
- 本店移転登記が必要になるケースとは?
- 同一市区町村内の移転と異なる市区町村への移転の違い
- 管轄外移転の際に必要な「登記所の移動」とは?
- 定款変更の必要性と決議方法
- 登記手続きの流れと必要書類
- 登録免許税と司法書士報酬の相場
- 本店移転にともなう届出関係(税務署・銀行等)
- まとめ:移転後は早めの登記申請を!
1. 本店移転登記が必要になるケースとは?

法人の本店所在地を変更した場合は、必ず登記変更を行う必要があります。たとえ実際の業務拠点が移転していなくても、登記上の「本店」の住所を変えたら、登記申請が必要です。
変更登記を怠ると、取引先からの信頼低下や郵便物の未着、金融機関での手続き遅延などが発生するほか、過料(10万円以下)の対象になる場合もあります。
2. 同一市区町村内の移転と異なる市区町村への移転の違い
本店移転登記は、「移転先が同一市区町村内かどうか」で手続きが異なります。
- 同一市区町村内(例:新宿区内→新宿区内)
→ 原則として取締役会(または代表者)決定のみでOK。定款の記載が「東京都新宿区」のように大まかな場合は定款変更不要。 - 異なる市区町村へ(例:新宿区→渋谷区)
→ 定款の本店所在地の記載変更が必要になり、株主総会等の特別決議が必要。
さらに、移転先の法務局(登記所)の管轄が変わる場合には、登記申請も2か所に提出することになります。
3. 管轄外移転の際に必要な「登記所の移動」とは?

たとえば、東京都新宿区から神奈川県横浜市に本店を移転する場合、登記所の管轄が変わるため、登記申請も2度必要です。
この場合は、
- 旧管轄(新宿出張所)に「本店移転による閉鎖登記」申請
- 新管轄(横浜地方法務局)に「本店設置登記」申請
このように、移転日を挟んで、管轄の両方に登記を行う必要があるため、スケジュール管理が重要です。
4. 定款変更の必要性と決議方法
本店所在地が定款に「○○区」や「○○市」と明記されている場合、その地名を変更する必要があります。その際には、以下のような決議が求められます。
- 株式会社:株主総会の特別決議(議決権の過半数出席+3分の2以上の賛成)
- 合同会社:社員の同意(全員一致が原則)
同一市区町村内の場合、定款の記載を変更しない限り、決議は不要なケースもあります。
5. 登記手続きの流れと必要書類
以下は、登記手続きの一般的な流れと書類です。
● 手続きの流れ
- 決議(取締役会や株主総会)
- 移転日(会社が移転した日)
- 移転日から2週間以内に登記申請(管轄外の場合は旧・新双方)
● 必要書類
- 株主総会議事録または取締役会議事録
- 登記申請書
- 印鑑届出書(移転に伴い印鑑を変更する場合)
- 定款の写し(変更箇所)
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
6. 登録免許税と司法書士報酬の相場
■ 登録免許税
- 同一管轄内移転:3万円(定額)
- 管轄外移転:3万円 × 2(合計6万円)
■ 司法書士報酬(参考)
- 同一市区町村内:3万〜
- 管轄外移転:4万〜8万円程度(複雑さによる)
※法人印や登記事項証明書の取得費用などは別途。
※管轄外移転と同時にする変更登記については、別に費用が発生します。
7. 本店移転にともなう届出関係(税務署・銀行等)
登記変更後は、以下の機関にも届け出を行う必要があります。
- 税務署・都道府県税事務所・市区町村役所(異動届)
- 年金事務所・ハローワーク・労働基準監督署(従業員がいる場合)
- 金融機関(銀行):住所変更届、印鑑変更届など
- 取引先・顧客:郵送物や契約書住所の変更対応
特に許認可事業を行っている会社は、行政庁への届出が必須になる場合があります。移転前に確認しておくことが大切です。
8. まとめ:移転後は早めの登記申請を!
本店移転は、会社にとって重要な転機です。
しかし、登記や行政手続きが不十分だと、信頼の損失や手続きの停滞を招きます。
✅ 同一市区町村内かどうかで、定款変更の要否が変わる
✅ 管轄外移転の場合は、2つの法務局への申請が必要
✅ 登記申請は移転日から2週間以内が原則
✅ 登録免許税と専門家報酬の把握を事前に
✅ 関係官庁・金融機関等への届出も忘れずに!
本店を移したら、法務局への登記とともに、税務・労務・実務の整理まで一貫して対応するのがスムーズです。
複雑な場合は、司法書士や税理士に相談して、確実な手続きを行いましょう。

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