第3回:有限会社(特例有限会社)の解散登記に必要な書類

2025年10月20日

有限会社(特例有限会社)の解散登記は、株式会社の手続きと似ている部分もありますが、添付書類の要否や実務上の注意点に大きな違いがあります。特に「定款」の取扱いが異なるため、株式会社と同じ感覚で申請すると補正になるリスクがあります。本記事では、有限会社(特例有限会社)の解散登記に必要な書類を司法書士が詳しく解説し、スムーズに登記を進めるためのポイントを整理します。

目次

  1. 有限会社(特例有限会社)の位置づけ
  2. 解散登記の基本書類一覧
  3. 清算人の選任と必要書類
  4. 株式会社との違い ― 定款の取扱い
  5. 清算人の印鑑届と印鑑証明書の要否
  6. 実務で注意すべきポイント
  7. まとめ

1. 有限会社(特例有限会社)の位置づけ

2006年の会社法施行により、新たに有限会社を設立することはできなくなりました。
しかし、それ以前に存在した有限会社は「特例有限会社」として存続しており、現在も一定数の法人が活動しています。

この特例有限会社も、事業を終了する際には「解散登記」を行い、その後「清算人による清算手続き」を進める必要があります。
したがって、解散登記は株式会社と同様、会社終了のスタートラインとなります。

2. 解散登記の基本書類一覧

有限会社の解散登記に必要な基本的な添付書類は以下のとおりです。

  • 登記申請書
  • 社員総会議事録(解散決議)
  • 社員リスト(社員総会で決議を行った場合)
  • 清算人就任承諾書
  • 定款(必要となる場合と不要な場合あり)
  • 印鑑届出書+清算人の印鑑証明書

ここまでは株式会社と共通しますが、定款の要否に違いがある点が実務上の重要ポイントです。

3. 清算人の選任と必要書類

有限会社の清算人は、以下のように決まります。

  1. 定款に定める者(定款指定清算人)
  2. 社員総会で選任された者
  3. 法定清算人(取締役全員)
  4. 裁判所が選任した者

この点は株式会社と同様ですが、添付書類の違いが出てくるのは 定款の添付 です。

4. 株式会社との違い ― 定款の取扱い

株式会社では、清算人の選任方法がどのパターンであっても「定款の添付が必須」です。
その理由は、

  • ①定款指定の場合:定款に清算人の定めがあることを確認するため
  • ②株主総会選任の場合:定款に特段の定めがないことを確認するため
  • ③法定清算人の場合:同じく定めがないことを確認するため
  • ④裁判所選任の場合:同じく定めがないことを確認するため

つまり、株式会社では必ず定款の添付が必要となります。

一方、有限会社の場合には「清算人会設置会社」という制度自体が存在しません。
そのため、

  • ②社員総会で選任された場合
  • ④裁判所が選任した場合

定款の添付は不要です。

逆に、

  • ①定款指定の場合
  • ③法定清算人の場合

定款の添付が必要です。

👉 この点が、株式会社と有限会社の大きな違いです。実務では添付不要のケースで誤って定款を提出し、補正対象になることもありますので注意が必要です。

5. 清算人の印鑑届と印鑑証明書の要否

清算人が新たに登記簿上の代表者となる場合、法務局への印鑑届出が必要です。

  • この際、届出書に清算人の実印を押印し、印鑑証明書を添付します。
  • つまり、印鑑証明書が必要となるのは「印鑑届出書」に対してであり、清算人就任承諾書に印鑑証明書を添付する必要はありません

株式会社と同様、商業登記規則61条4項・5項・6項は清算人には適用されないため、承諾書の本人確認を印鑑証明書で行う必要がないのです。

👉 実務で誤解されやすい点ですが、正しく理解しておくことが重要です。

6. 実務で注意すべきポイント

有限会社(特例有限会社)の解散登記を行う際に注意したいポイントを整理します。

  • 定款添付の要否を正しく判断する。
  • 印鑑証明書は承諾書には不要であることを押さえる。
  • 社員総会議事録の作成において、出席社員・議決権の記載漏れに注意する。
  • 特例有限会社は設立から長期間経過していることが多く、定款の保管状況が悪いケースがある。定款が見つからない場合は事前に再製や確認作業を行う必要がある。

7. まとめ

有限会社(特例有限会社)の解散登記は、株式会社と多くの点で共通するものの、定款の添付要否という大きな違いがあります。
この点を理解せずに申請すると補正になりやすいため、注意が必要です。

また、清算人の印鑑証明書についても「就任承諾書には不要」「印鑑届出書に添付が必要」という整理を押さえておきましょう。
解散登記は会社の終了に向けた第一歩。確実に添付書類を整えて臨むことが重要です。

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