会社設立時の定款作成で避けて通れないのが「目的欄」。将来の事業展開や許認可取得に直結するため、汎用性と明確性のバランスをとることが重要です。
資本金はいくらが妥当?1円での設立は本当に可能か

会社設立時の資本金は「1円からOK」とされますが、実際の運営にはどの程度が必要なのでしょうか?制度上の自由と実務上の注意点をわかりやすく解説します。
目次
- 資本金1円でも会社は作れるのか?
- 最低資本金制度の廃止とその背景
- 資本金が少ない場合のリスクとは
- 実務上、資本金はいくらが妥当か
- 融資・信用力に与える影響
- 資本金の決め方と注意点
- まとめ:制度の自由と現実的な判断
1. 資本金1円でも会社は作れるのか?

現在の日本の会社法では、株式会社でも合同会社でも、資本金1円から設立が可能です。これは法律上の制限が撤廃されたためであり、書類上も法務局の登記に問題はありません。「1円起業」や「ノーリスク起業」といった言葉も出回るようになり、手軽さが強調されています。
しかし、これはあくまで"法律上の可能"であり、"現実的な選択"であるかは別の問題です。
2. 最低資本金制度の廃止とその背景
かつては、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円の最低資本金が必要とされていました。これは「信用ある会社」を作るための担保という位置づけでした。
しかし、2006年の会社法改正により最低資本金制度は廃止され、1円からの設立が認められるようになりました。背景には、起業を促進する政府の方針や、ベンチャー企業の参入障壁を下げる狙いがありました。
3. 資本金が少ない場合のリスクとは

理論的には1円で会社を設立できますが、現実的にはさまざまな不都合が生じます。たとえば、以下のような点が問題になります。
- 運転資金の不足:設立後の家賃、仕入れ、人件費などをどうまかなうのかという点が現実問題として浮かびます。
- 取引先の信用不足:「資本金1円」と登記簿に記載されることで、「この会社は信用してよいのか?」と警戒される場合があります。
- 銀行口座の開設が難航する場合も:一部金融機関では資本金が極端に少ない会社に対し、口座開設を慎重に進めるケースがあります。
4. 実務上、資本金はいくらが妥当か
起業する業種や事業計画によって妥当な資本金額は異なりますが、一般的には100万円〜300万円程度を目安にするケースが多いです。
たとえば以下のような考慮が必要です。
- 家賃保証や契約金:オフィスや店舗を借りる場合、保証金や前家賃が必要です。
- 広告宣伝費:スタートアップ時に顧客を得るには、一定の宣伝コストが発生します。
- 人件費:役員報酬やアルバイトの給料などを事前に見積もっておくべきです。
資本金は原則として「自由に使ってよい会社の資金」です。設立直後の運転資金と考えると、ある程度の余裕を持たせた金額が必要となります。
5. 融資・信用力に与える影響

資本金の額は、金融機関の融資審査や取引先からの信用評価にも影響します。特に創業融資(日本政策金融公庫など)を考えている場合、資本金が数万円程度では「経営に本気で取り組んでいない」と判断されることもあります。
また、BtoBの取引を行う場合、取引先のリスク管理部門が資本金額をチェックすることもあり、あまりに少額だと契約を断られることも珍しくありません。
6. 資本金の決め方と注意点
資本金を決める際は、以下の点を意識するのがよいでしょう。
- 半年〜1年の運転資金を見積もる
- 無理なく用意できる現金の範囲で考える
- 税務上の影響も考慮する
なお、資本金が1,000万円未満であれば、設立から2年間は消費税が免除される特例があります(※一部除外あり)。このメリットを活かすため、あえて999万円に設定するという選択もあります。
また、資本金を後から増やす「増資」も可能なので、最初は無理のない範囲で設定し、業績に応じて見直す方法もあります。
7. まとめ:制度の自由と現実的な判断
資本金1円での会社設立は、たしかに制度上は可能です。しかし、実務上は運転資金や信用力を考慮した現実的な金額設定が重要です。
「最低限いくらあれば会社が成立するか」ではなく、「事業を安定的に継続できるにはいくら必要か」という視点で資本金を決めるべきです。
自由があるからこそ、慎重に。最初の資本金設定は、経営者としての第一歩の判断力が問われるポイントです。

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