「事業目的」はどこまで書くべきか? ― 銀行・許認可・将来変更で困らない設計とは ―

2026年01月23日

会社設立時に必ず決める「事業目的」。実はこの書き方一つで、銀行口座が開設できなかったり、許認可が取れなかったり、将来の事業拡大で変更登記が必要になることがあります。本記事では、商業登記の実務を踏まえ、事業目的をどこまで書くべきか、その最適な設計方法を司法書士が解説します。

目次

  1. 事業目的とは何か ― 商業登記上の役割
  2. 「多ければ安心」は本当か?よくある誤解
  3. 銀行が事業目的をチェックする理由
  4. 許認可が必要になる事業目的の考え方
  5. 将来の事業拡大と変更登記の関係
  6. 実務上おすすめの事業目的設計
  7. 司法書士に相談すべきタイミング
  8. よくある質問(FAQ)

1. 事業目的とは何か ― 商業登記上の役割

 事業目的とは、その会社が何をする会社なのかを第三者に示すための項目です。
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を見れば、銀行・取引先・行政機関はまず事業目的を確認します。

重要なのは、事業目的は

  • 自由に書けるように見えて
  • 実務では「信用判断の材料」として使われている
    という点です。

2. 「多ければ安心」は本当か?よくある誤解

 設立相談で非常に多いのが、

「将来やるかもしれない事業も全部入れておきたい」

という考え方です。

しかし、

  • あまりに多い
  • 事業内容が曖昧
  • 実態が見えない

このような事業目的は、銀行や取引先から警戒される原因になります。

事業目的は
"広すぎず、狭すぎず"
が原則です。

3. 銀行が事業目的をチェックする理由

 銀行口座開設時、金融機関は必ず登記簿を確認します。

チェックされている主なポイントは

  • 実際の事業内容と一致しているか
  • 不明確・不自然な事業が含まれていないか
  • マネーロンダリング等のリスクがないか

例えば

  • IT会社なのに「古物営業」「投資業」などが混在
  • 実態説明ができない事業目的が多数

この場合、追加資料提出や口座開設不可になることがあります。

👉 ③「登記はできたのに銀行口座が作れない理由」と強く関係するポイントです。

4. 許認可が必要になる事業目的の考え方

 次に重要なのが許認可との関係です。

代表的な例として

  • 建設業
  • 宅地建物取引業
  • 古物営業
  • 人材紹介業

これらは
✔ 事業目的に明確な文言が必要
✔ 文言が足りないと申請が受理されない

というケースがあります。

「あとで足せばいい」と思っていると、
変更登記 → 許認可申請
という二度手間・追加コストが発生します。

5. 将来の事業拡大と変更登記の関係

 新しい事業を始める際、

  • 既存の事業目的でカバーできる → 登記不要
  • カバーできない → 事業目的変更登記が必要

という判断になります。

変更登記を放置すると

  • 契約時に不審がられる
  • 許認可・補助金で不利
  • 過料のリスク

につながることもあります。

👉 ⑤「変更登記チェックリスト」と直結する部分です。

6. 実務上おすすめの事業目的設計

 司法書士としておすすめしている設計は、

1️⃣ 現在行う事業を明確に書く
2️⃣ 近い将来の展開を"関連性のある範囲"で補足
3️⃣ 実態説明ができない事業は入れない

例:
×「前各号に附帯関連する一切の事業」だけ
○「前各号に附帯関連する事業(具体的内容あり)」

**「説明できるかどうか」**が判断基準です。

※金融機関によって変わりますが、とある金融機関では「輸出入」のキーワードをマネロンを疑って嫌うケースがあります。実態が証明できれば問題ありませんが。

7. 司法書士に相談すべきタイミング

次のような場合は、事前相談をおすすめします。

  • 銀行口座開設を確実に通したい
  • 許認可を視野に入れている
  • 将来、事業拡大・法人化を考えている
  • すでに口座開設で止まった

事業目的は、設立後に直すより、最初に整える方が圧倒的に楽です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 事業目的はいくつまで書けますか?
A. 法律上の上限はありませんが、実務では5〜10個程度が一般的です。

Q2. あとで追加するのは簡単ですか?
A. 株主総会決議・変更登記が必要となり、費用と手間がかかります。

Q3. 迷ったら広めに書いた方がいいですか?
A. 無関係な事業を入れるより、関連性のある範囲で設計する方が安全です。


(商業登記専用・2026年対応)

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