【事業承継】株式譲渡契約の法的整備とトラブル防止策をわかりやすく解説

2025年09月08日

事業承継で重要な株式譲渡契約は、法的整備が不十分だと後のトラブルの火種になります。本記事では、株式譲渡契約書の基本内容や注意点、承継時のリスク回避策までを解説します。

目次

  1. はじめに:なぜ株式譲渡契約が重要なのか
  2. 株式譲渡契約の基本構成
  3. 法的整備が不十分な場合に起こり得るトラブル
  4. 契約書に盛り込むべき主要条項
  5. 株式譲渡と承継税制・登記の関係
  6. 司法書士・専門家の関与が必要な理由
  7. まとめ:事業の安定承継には契約の明文化が不可欠

1. はじめに:なぜ株式譲渡契約が重要なのか

 中小企業の事業承継では、経営権の移転に伴って株式の譲渡が行われます。特に同族会社では、代表取締役=大株主であることが多いため、「株式=経営権」となります。この重要な資産移転を口約束や曖昧な契約で済ませてしまうと、承継後に親族間や第三者との間でトラブルになる可能性が高まります。

2. 株式譲渡契約の基本構成

 株式譲渡契約書は、以下のような内容を明文化します。

  • 譲渡人(売主)と譲受人(買主)の氏名・住所
  • 譲渡対象となる株式の数と種類
  • 株式の譲渡価格
  • 代金支払方法・支払時期
  • 株券の引渡し方法(または株券不発行の明記)
  • 譲渡承認に関する手続(会社法第137条関連)
  • 表明保証条項
  • 秘密保持条項
  • 紛争解決方法(裁判所の管轄等)

 このように、単なる「株の売買」ではなく、会社全体のガバナンスや今後の経営に大きく関わる契約であることが分かります。

3. 法的整備が不十分な場合に起こり得るトラブル

 株式譲渡契約を適切に整備しなかった場合、以下のようなリスクが発生します。

  1. 価格トラブル
     譲渡価格が明示されていない、または公正な評価を行っていないために、後から「不当だ」と主張されるケース。
  2. 譲渡無効の主張
     会社の定款に譲渡制限がある場合、株主総会や取締役会の承認がないと譲渡が無効になることがあります。
  3. 親族間の相続争いに発展
     代表者が亡くなった後、「本当に譲渡されていたのか」「贈与ではなかったか」といった争いが発生するリスク。
  4. 税務リスク
     株価評価が適正でない場合、贈与税や譲渡所得課税の対象となるおそれがあります。

4. 契約書に盛り込むべき主要条項

 株式譲渡契約書には以下のような条項を必ず盛り込むべきです。

  • 表明保証条項:譲渡人が「譲渡する株式に争いがないこと」を保証する
  • クロージング条件:株式譲渡が完了するために必要な条件(たとえば取締役会の承認など)
  • 解除条項:一定の条件を満たさない場合に契約を解除できる旨
  • 誠実協議条項:問題が生じた場合にはまず誠実に協議するという姿勢を契約に明記
  • 管轄裁判所:トラブル時の裁判管轄を定めておく(例:東京地方裁判所)

 これらの条項があることで、万が一の紛争時にも冷静に対処できる道筋が整います。

5. 株式譲渡と承継税制・登記の関係

 株式譲渡は税務・登記の両面からも重要な影響があります。

  • 贈与とみなされる場合の贈与税
     無償または著しく安い価格で譲渡した場合、税務署から「贈与」とみなされることがあります。
  • 譲渡益に対する譲渡所得税
     譲渡人に譲渡益が生じる場合は所得税が発生します。
  • 商業登記の必要性
     株式譲渡により経営者が交代する場合、代表取締役の変更登記が必要です。登記を怠ると過料の対象にもなります。

6. 司法書士・専門家の関与が必要な理由

 株式譲渡契約は、単なる売買契約ではなく、将来の会社の運命を左右する重要な契約です。加えて、定款確認や取締役会の議事録作成、登記の手続きなど複雑な法的処理を伴うため、司法書士・弁護士・税理士などの専門家と連携して進めるのが望ましいです。

 司法書士は商業登記の専門家として、以下のような場面で支援できます。

  • 代表取締役の変更登記
  • 株主リストの整備
  • 株式譲渡制限条項の確認と改定
  • 株主総会・取締役会議事録の作成支援

7. まとめ:事業の安定承継には契約の明文化が不可欠

 事業承継における株式譲渡は、感情的な問題・親族間の認識違い・税務的な誤解など、多くのリスクをはらんでいます。これらのリスクを防ぐためには、契約の明文化法的整備が不可欠です。特に中小企業では、これまで口約束や信頼関係で経営が成り立っていたケースも多いため、専門家の関与により、契約書の整備と登記までをワンストップで行うことが望ましいでしょう。

トピック

会社設立後、登記を一度も見直さないまま3年が経過している企業は少なくありません。しかし、登記情報は銀行・取引先・行政から「会社の信用」を判断される重要な資料です。本記事では、設立後3年以内に必ず確認したい登記メンテナンスのポイントと、放置した場合のリスクを実務目線で解説します。

これまで会社や法人の設立登記は、法務局が開庁している日に登記申請を行い、その申請日が設立日として登記簿に記録されるのが原則でした。ところが令和8年2月2日から、申請者の希望に応じて土日祝日・年始休日などの「行政機関の休日」も会社等の設立日として登記簿に記載できる制度が始まります。この改正は、設立日を縁起の良い日や記念日にしたいというニーズに対応したものです。

会社設立時に何気なく決めてしまいがちなのが「代表者の肩書」と「権限」です。登記上の役職と実際の役割がズレていると、契約が無効になったり、銀行手続きで止まったりすることがあります。本記事では、商業登記と実務の視点から、代表者の肩書・権限をどう設計すべきかを分かりやすく解説します。

会社設立時に決める「本店住所」は、単なる所在地ではありません。銀行口座開設、融資、許認可、取引開始など、さまざまな場面で会社の信用を判断する材料として見られています。自宅、バーチャルオフィス、賃貸オフィスのどれを選ぶかによって、設立後の実務が大きく変わることもあります。本記事では、本店住所の選び方を商業登記と実務の両面から解説します。