【会社法】募集株式の発行とは?新株発行と自己株式処分の違いをわかりやすく解説!

2025年07月25日

資金調達や資本政策を行う際、会社が採用する代表的な手法のひとつが「募集株式の発行」です。しかし、実務では「新株発行」と「自己株式の処分」が混同されることが多く、それぞれの法的性質や資本金への影響、登記上の違いを正しく理解しておくことが重要です。本記事では、会社法に基づく募集株式の発行について、基本的な仕組みから、新株発行と自己株式の処分の違いまで、わかりやすく解説します。特に中小企業の経営者や実務担当者、司法書士試験を目指す方にも有益な内容となっています。

目次

  1. 募集株式の発行とは何か
  2. 新株発行の基本と資本金への影響
  3. 自己株式の処分とは?
  4. 新株発行と自己株式処分の違い
  5. それぞれの実務上の注意点
  6. よくある誤解と正しい理解
  7. まとめ:目的に応じた使い分けが重要

1. 募集株式の発行とは何か

 「募集株式の発行」とは、会社が資金調達などの目的で既存の株主以外に株式を発行する手続きを指します。会社法第199条以下に規定されており、株主総会あるいは取締役会の決議によって行われます。

 新たな出資者を募って株式を引き受けてもらうことで、会社は現金または現物による出資を受け、資本金や資本準備金を形成します。

2. 新株発行の基本と資本金への影響

新株発行とは、新たに株式を発行し、会社が資金を受け取ることを指します。この際、会社は出資金の全額または一部を資本金に組み入れることができます。

資本金と資本準備金の関係

 会社法第445条第2項により、払込金額の2分の1までは「資本準備金」として処理することが可能です。たとえば1,000万円の出資を受けても、そのうち500万円だけを資本金にし、残りを資本準備金とすることもできます。

発行済株式数は増加する

 新株発行により発行済株式数が増加します。これにより既存株主の持株比率は相対的に低下(希薄化)する可能性があります。

3. 自己株式の処分とは?

 「自己株式」とは、会社が過去に発行した株式を買い戻して保有しているものです。これを第三者に譲渡することを「自己株式の処分」といいます(会社法第198条)。

 一見すると新株を発行するのと同じように資金調達が可能ですが、法的には全く異なる手続きであり、「募集株式の発行」には該当しません。

4. 新株発行と自己株式処分の違い

 自己株式の処分では、新たな株式の発行がないため、形式上の「増資」にはあたりません。資本金に組み入れることは可能ですが、あくまで帳簿上の処理にとどまります。

5. それぞれの実務上の注意点

  • 新株発行の場合:
    • 株主総会または取締役会の決議が必要
    • 希薄化リスクに注意
    • 登記申請が必要(資本金増加や発行株式数の変更)
  • 自己株式の処分の場合:
    • 虚偽の時価で譲渡すると利益供与となるおそれ(会社法120条)
    • 譲渡先の選定や価格の公正性が求められる
    • 株数は変わらないため株主構成の影響が小さい

6. よくある誤解と正しい理解

 「自己株式を処分すれば増資になる」と考えるのは誤解です。たしかに資金は入りますが、資本金の増加を伴う形式的な「増資」ではないという点がポイントです。

 資本政策上は、新株発行と混同せず、自己株式はあくまで資産の処分であるという認識が重要です。

7. まとめ:目的に応じた使い分けが重要

新株発行=募集株式の発行=資本金の増加
自己株式の処分≠新株発行≠形式的な増資

 このように、会社法上は両者を明確に区別しています。資金調達の目的、株主構成の維持、信用力の強化など、会社の事情に応じてどちらの手段を選択するかは慎重に判断する必要があります。

 増資を検討している場合や、自己株式を活用したいと考えている場合には、司法書士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

 特に司法書士受験生にとって、商業登記の記述試験で自己株式見逃しは、即死レベルの重要ポイントです。

変更登記

資金調達や資本政策を行う際、会社が採用する代表的な手法のひとつが「募集株式の発行」です。しかし、実務では「新株発行」と「自己株式の処分」が混同されることが多く、それぞれの法的性質や資本金への影響、登記上の違いを正しく理解しておくことが重要です。本記事では、会社法に基づく募集株式の発行について、基本的な仕組みから、新株発行と自己株式の処分の違いまで、わかりやすく解説します。特に中小企業の経営者や実務担当者、司法書士試験を目指す方にも有益な内容となっています。

会社の本店移転に関する登記手続きは、移転先によって必要な準備や決議が大きく異なります。特に、本店を「市区町村」単位で越えて移転する場合は注意が必要です。このような移転では、定款の変更が必須となり、株主総会での特別決議も求められます。
また、移転先が現在の法務局の管轄外にある場合には、さらに手続きが複雑になります。