多くの企業が誤解しがちなのが、「あとから決議すれば大丈夫」という考えです。
たしかに会社内部の意思としては「再任を予定していた」と説明できるかもしれませんが、法的には空白期間の発生を防げません。
たとえば、任期満了が2023年6月で、株主総会での再任が2024年6月だった場合、2023年6月~2024年6月の1年間は正規の役員が存在しなかったことになります。
この空白期間は、行政庁にとっては"違法状態"とみなされ、「事後処理でカバーできる問題ではない」とされるのが一般的です。
5. 取消を回避するための現実的な対応策
行政処分を回避するために、会社側でできる実務対応をいくつかご紹介します。
- 役員の任期管理をシステム化(Excelやクラウド管理)
- 株主総会開催の年間スケジュールを組む
- 再任予定者と事前に打診・合意をとっておく
- 選任決議から登記・許認可変更届までをワンセットで対応
- 司法書士や行政書士など専門家との定期的なチェック体制
また、許認可業種の場合は、役員の変更が許認可維持条件に直結することを、社内で明文化し共有しておくことも有効です。
6. まとめ:選任は「ただの形式」ではない
役員の選任は、単なる社内の形式的な行為と思われがちですが、許認可を持つ企業にとっては"事業の存続条件"そのものです。
選任懈怠を「うっかり」で済ませることはできず、実際に行政処分を受けた事例も存在します。
特に、許認可取消となれば、元に戻すのも容易ではなく、信頼の回復や事業の再開に多大な労力を要します。
「うちは小規模だから」「どうせ再任だし」と油断せず、任期管理と選任対応は常に先回りしておくことが、会社を守るうえで不可欠です。
※過料、許認可取消など、聞きたくないような話ですが、必ず専門家に相談することをお勧めします。