【第1回】そもそも『変更登記』って何?~いつ、なぜ必要なのかをやさしく解説~

2025年06月16日

会社経営をしていると、「役員が変わった」「本店を移転した」「事業の目的を増やしたい」「社名を変えたい」など、様々な変更が起こります。これらの変更を法務局に届け出ることを「変更登記」と呼びます。実は、この変更登記には提出期限があることをご存じでしょうか?怠ると過料の対象になるだけでなく、将来の手続きで困ることもあります。

本記事では、「商業登記」「変更登記とは何か」「いつ必要なのか」「登記をしないとどうなるか」など、会社の登記事項変更にまつわる基本的な内容をわかりやすく解説します。これから法人登記を学びたい方、総務担当者、新たに法人を立ち上げたばかりの経営者の方にとって、必見の内容です。

【目次】

  1. 変更登記とは?~会社の「履歴書」を正しく書き換える手続き~
  2. 登記が必要になる「変更」の具体例
  3. 登記をしないとどうなる?~過料のリスクと実務上のデメリット~
  4. 変更登記の期限と原則的なルール
  5. まとめ:変更登記を軽視しないためにできること

1. 変更登記とは?~会社の「履歴書」を正しく書き換える手続き~

 会社は、設立した後もさまざまな変更が生じます。代表者が交代したり、事業内容が変わったり、本店所在地が移転したりすることもあるでしょう。これらの情報はすべて、法務局で管理されている「商業登記簿」に反映させる必要があります

 この登記簿に変更内容を記録する手続きのことを、正式には「登記事項変更登記(変更登記)」と呼びます。つまり、会社の「今の状態」を常に正しく公的に示すことが、会社に求められているのです。

 商業登記簿は、誰でも閲覧可能で、信用調査や契約の相手方の確認などにも使われるため、情報が最新であることは非常に重要です。

2. 登記が必要になる「変更」の具体例

 登記が必要になる変更事項は、会社法などの法律で定められています。代表的なものをいくつかご紹介します。

  • 役員に関する変更(就任・辞任・再任など)
  • 商号(会社名)の変更
  • 本店所在地の変更(管轄法務局が変わる場合は注意)
  • 目的の追加・変更(事業内容を広げる・縮小するなど)
  • 資本金の増減
  • 機関設計の変更(監査役を置く・廃止するなど)

 このように、比較的よくある事柄でも登記が必要になるため、「ちょっとした変更だから後回しでいいか」と放置してしまうのは大変危険です。

3. 登記をしないとどうなる?~過料のリスクと実務上のデメリット~

 会社に関する変更を登記せず放置していると、法務局から「過料(かりょう)」という行政罰が科される可能性があります。これはいわゆる罰金ではなく、義務違反に対する制裁金です。

 例えば、代表取締役を変更したにもかかわらず登記をせず放置していた場合、会社に対して最大100万円以下の過料が科されることもあります。

 また、過料だけではなく、次のような実務的デメリットもあります。

  • 新しい代表者で銀行口座を開設できない
  • 官公庁への届出で整合性が取れず手続きが止まる
  • 契約先から信用を失うリスク
  • 補助金・助成金申請時に不備とされる可能性

 会社にとって、信用と手続きの円滑さは命です。変更登記の怠りは、知らず知らずのうちに自社の足を引っ張ることになりかねません。

4. 変更登記の期限と原則的なルール

 登記の申請には法定期限があります。基本的には、「変更があった日から2週間以内」に申請しなければなりません(会社法第915条など)。

 たとえば、株主総会で代表取締役が交代した場合は、その決議日(または辞任届の受理日)から2週間以内に登記申請をしなければならないのです。

 もしこの期限を過ぎてしまうと、前述の通り「過料」のリスクがあります。2週間という期間は意外と短く、書類の収集・押印・法務局への提出などを考えると、社内での段取りが遅れるだけでアウトになることもあります。

5. まとめ:変更登記を軽視しないためにできること

 変更登記は、会社運営において欠かすことのできない「信用の土台」です。これを怠ると、過料や実務上のトラブルを招くだけでなく、取引先や行政との関係にも悪影響を与えます。

 今後、以下の点に注意して変更登記を行うようにしましょう。

  • 定期的に登記事項と実際の状況にズレがないか確認する
  • 変更が決定したら、すぐに必要書類の準備を開始する
  • 期限内に提出できない場合は、司法書士に相談して早めの対応を

 次回は、実務上もっとも多い登記である「役員変更登記」について、就任・辞任・再任の違いや必要書類などを詳しく解説していきます。

変更登記

資金調達や資本政策を行う際、会社が採用する代表的な手法のひとつが「募集株式の発行」です。しかし、実務では「新株発行」と「自己株式の処分」が混同されることが多く、それぞれの法的性質や資本金への影響、登記上の違いを正しく理解しておくことが重要です。本記事では、会社法に基づく募集株式の発行について、基本的な仕組みから、新株発行と自己株式の処分の違いまで、わかりやすく解説します。特に中小企業の経営者や実務担当者、司法書士試験を目指す方にも有益な内容となっています。

会社の本店移転に関する登記手続きは、移転先によって必要な準備や決議が大きく異なります。特に、本店を「市区町村」単位で越えて移転する場合は注意が必要です。このような移転では、定款の変更が必須となり、株主総会での特別決議も求められます。
また、移転先が現在の法務局の管轄外にある場合には、さらに手続きが複雑になります。