【第3回】なぜ清算人登記で「定款」が必要なのか?(株式会社編)司法書士が詳しく解説
株式会社が解散し、清算人を登記する際には「定款のコピー」を添付する必要があります。しかし、なぜ解散登記時に定款確認が求められるのか、他の登記では不要なのに清算人だけ例外なのか、実務でも誤解が多い部分です。本記事では、司法書士が清算人登記と定款添付の理由を体系的に解説します。

会社が解散すると、通常の「取締役」は職務を終え、代わりに「清算人」が会社の後処理(清算業務)を担当します。本記事では、清算人が何をする人なのか、誰がなるのか、実務上の注意点まで司法書士がわかりやすく解説します。中小企業や閉鎖会社でも役立つ内容です。
目次
1. 清算手続きとは何か

会社が解散すると、その会社は通常の事業活動をやめ、「営業」ではなく「精算」へと移行します。
清算とは、会社が保有する財産を換価し(売却等)、負債を弁済し、残余財産があれば株主に分配して、最終的に法人格を消滅させる一連の手続きです。
清算手続きの大まかな流れは次のとおりです。
この中で中心的な役割を担うのが「清算人」です。
2. 清算人とは?その役割と法的位置づけ

清算人は、解散後の会社において取締役に代わり、会社の財産管理と対外的な業務を一手に担う立場です。
法律上は、清算人は「会社の代表機関」として、取締役と同様に会社を代表します(会社法 478条)。
清算人の位置づけは次の通りです。
つまり「会社を畳む専門の代表者」というイメージです。
3. 清算人は誰が就任するのか

清算人は、原則として次の順序で決まります。
会社によっては定款に「解散の時は取締役が清算人となる」などの条項が入っていることがあります。
特に有限会社時代の定款には、清算人会の規定がそもそも存在しませんので、清算人の選任方法は比較的シンプルです。
4. 清算人が行う主な業務

清算人の業務は多岐にわたりますが、実務では次のような作業を行います。
● 法務局・官公庁・税務署などの手続き
● 財産の整理
● 債務の弁済
● 債権申出公告
官報公告(最低2か月間)により債権者へ通知します。
● 残余財産の分配
株主への配当相当の分配を行います。
● 帳簿の保存
清算結了後の帳簿保存義務(10年間)があります。
5. 清算人の選任方法(株式会社・合同会社・有限会社の違い)

● 株式会社
● 合同会社
● 有限会社
(会社法施行前から存続している会社)
6. 清算人登記までの流れ(実務ベース)
ここが遅れると手続全体が長引くため、実務では迅速な扱いが求められます。
7. 実務で注意すべきポイント

清算手続きは、登記面・税務面・財務面のすべてが絡むため、専門家の関与が有効です。
8. FAQ(よくある質問)

Q1. 清算人は必ず一人でないといけませんか?
→ 複数名でも問題ありません。株式会社の場合、複数清算人の「清算人会」を置く定款もあります。
Q2. 清算人の責任は重いですか?
→ 会社財産の管理者として注意義務を負います。善管注意義務違反があれば責任追及される可能性があります。
Q3. 取締役を辞任した後でも清算人になれますか?
→ なれます。株主総会で選任されれば問題ありません。
Q4: 清算人になりたくない場合は?
→ 株主総会の選任を辞退できます。ただし法定清算人になる場合は辞任手続きが必要です。
Q5: 清算人登記はいつまでに必要ですか?
→ 解散の日から2週間以内です(会社法)。遅れると過料が発生する可能性があります。
9.まとめ
清算人は、解散後の会社の後処理を担う非常に重要な役割です。
「会社を閉じる」というと単純に感じられますが、実際には財産管理・債務弁済・公告・分配など専門的な手続きが多く、実務負担は決して軽くありません。
特に、複数の取締役がいる会社、有限会社、古い定款をそのまま使っている会社では、清算人の選任について誤解が生じやすい部分があります。登記の遅れ・公告漏れなどがあるとトラブルの原因になるため、早い段階での専門家相談をおすすめします。

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