【第1回】清算人とは?会社が解散するときに何をする人なのか ― 司法書士が実務で徹底解説

2025年12月19日

会社が解散すると、通常の「取締役」は職務を終え、代わりに「清算人」が会社の後処理(清算業務)を担当します。本記事では、清算人が何をする人なのか、誰がなるのか、実務上の注意点まで司法書士がわかりやすく解説します。中小企業や閉鎖会社でも役立つ内容です。

目次

  1. 清算手続きとは何か
  2. 清算人とは?その役割と法的位置づけ
  3. 清算人は誰が就任するのか
  4. 清算人が行う主な業務
  5. 清算人の選任方法(株式会社・合同会社・有限会社の違い)
  6. 清算人登記までの流れ
  7. 実務で注意すべきポイント
  8. FAQ(よくある質問)
  9. まとめ

1. 清算手続きとは何か

 会社が解散すると、その会社は通常の事業活動をやめ、「営業」ではなく「精算」へと移行します。
 清算とは、会社が保有する財産を換価し(売却等)、負債を弁済し、残余財産があれば株主に分配して、最終的に法人格を消滅させる一連の手続きです。

 清算手続きの大まかな流れは次のとおりです。

  • 解散決議(株主総会)
  • 清算人の選任
  • 法務局への解散・清算人登記
  • 債権申出の公告
  • 会社資産の整理(債務弁済・売却など)
  • 残余財産の確定・分配
  • 清算結了の登記

この中で中心的な役割を担うのが「清算人」です。

2. 清算人とは?その役割と法的位置づけ

 清算人は、解散後の会社において取締役に代わり、会社の財産管理と対外的な業務を一手に担う立場です。

 法律上は、清算人は「会社の代表機関」として、取締役と同様に会社を代表します(会社法 478条)。

清算人の位置づけは次の通りです。

  • 会社の代表者
  • 解散後の財産管理者
  • 清算事務の執行者
  • 対外的な権限保持者(訴訟・契約等)

つまり「会社を畳む専門の代表者」というイメージです。

3. 清算人は誰が就任するのか

 清算人は、原則として次の順序で決まります。

  • 定款で定めがある場合 → 定款の定めが優先
  • 株主総会で選任するのが通常
  • 定款・株主総会で定めがない場合 → 最終の取締役が職務を引き継ぐ(法定清算人)

 会社によっては定款に「解散の時は取締役が清算人となる」などの条項が入っていることがあります。

 特に有限会社時代の定款には、清算人会の規定がそもそも存在しませんので、清算人の選任方法は比較的シンプルです。

4. 清算人が行う主な業務

 清算人の業務は多岐にわたりますが、実務では次のような作業を行います。

法務局・官公庁・税務署などの手続き

  • 解散登記の申請
  • 清算人の就任登記
  • 清算結了登記
  • 税務署・県税事務所・市町村への廃業届等

財産の整理

  • 現預金および売掛金の管理・回収
  • 不動産・動産の売却
  • 会社名義の契約解除(賃貸、リースなど)

債務の弁済

  • 買掛金や未払金の支払い
  • 社会保険料・税金の精算

債権申出公告

官報公告(最低2か月間)により債権者へ通知します。

残余財産の分配

株主への配当相当の分配を行います。

帳簿の保存

清算結了後の帳簿保存義務(10年間)があります。

5. 清算人の選任方法(株式会社・合同会社・有限会社の違い)

株式会社

  • 原則:株主総会決議
  • 定款で定めがあればその定めに従う
  • 法定清算人:最終の取締役(清算人未選任の場合)

合同会社

  • 原則:社員の過半数決定
  • 業務執行社員が自動的に清算人になるケースが多い

有限会社

(会社法施行前から存続している会社)

  • 清算人会の制度がない
  • 株主総会で選任するのが原則
  • 定款に特別な定めがなければ選任決議が必要
  • 清算人を選任しない場合 → 最終の取締役が法定清算人

6. 清算人登記までの流れ(実務ベース)

  • 株主総会で解散・清算人選任
  • 議事録制作
  • 代表印届出書(清算人の印鑑)
  • 解散登記申請
  • 清算人就任登記申請
  • 債権申出公告の手続き
  • 2か月経過後、財産整理へ

ここが遅れると手続全体が長引くため、実務では迅速な扱いが求められます。

7. 実務で注意すべきポイント

  • 取締役が複数名いる会社で、1名だけ清算人にするケース
     → 法定清算人ではなく、選任清算人として扱われる
  • 定款に清算人規定がある場合の確認が必要(株式会社)
  • 有限会社は定款添付が不要な場合がある(清算人会制度がないため)
  • 公告期間(2か月)は短縮できないので要注意
  • 債権者保護手続の不備は後に無効主張のリスクあり
  • 代表権の取り扱いを明確にしないと外部取引でトラブルの恐れ

清算手続きは、登記面・税務面・財務面のすべてが絡むため、専門家の関与が有効です。

8. FAQ(よくある質問)

Q1. 清算人は必ず一人でないといけませんか?

→ 複数名でも問題ありません。株式会社の場合、複数清算人の「清算人会」を置く定款もあります。

Q2. 清算人の責任は重いですか?

→ 会社財産の管理者として注意義務を負います。善管注意義務違反があれば責任追及される可能性があります。

Q3. 取締役を辞任した後でも清算人になれますか?

→ なれます。株主総会で選任されれば問題ありません。

Q4: 清算人になりたくない場合は?

→ 株主総会の選任を辞退できます。ただし法定清算人になる場合は辞任手続きが必要です。

Q5: 清算人登記はいつまでに必要ですか?

→ 解散の日から2週間以内です(会社法)。遅れると過料が発生する可能性があります。

9.まとめ

 清算人は、解散後の会社の後処理を担う非常に重要な役割です。
「会社を閉じる」というと単純に感じられますが、実際には財産管理・債務弁済・公告・分配など専門的な手続きが多く、実務負担は決して軽くありません。

 特に、複数の取締役がいる会社、有限会社、古い定款をそのまま使っている会社では、清算人の選任について誤解が生じやすい部分があります。登記の遅れ・公告漏れなどがあるとトラブルの原因になるため、早い段階での専門家相談をおすすめします。

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