取締役が複数いる有限会社(特例有限会社)で会社を解散する場合、「清算人は取締役全員なのか?」「一部の取締役だけを清算人にできるのか?」という点は、実務でもトラブルが非常に多い論点です。本記事では、会社法の規定と登記実務の両面から、清算人選任の可否と手続きのポイントを司法書士が徹底的に解説します。
【第2回】清算人はどのように定める?定款・取締役・株主総会の優先順位を司法書士が解説

会社を解散すると、事業運営は停止し、財産整理を行う「清算人」が必要になります。しかし清算人は誰がどうやって決めるのか、定款・取締役・株主総会のどれが優先されるのか、誤解が多いポイントです。本記事では、清算人の定め方を司法書士の実務に基づいて徹底解説します。
目次
- 清算人を決めるルールはなぜ重要なのか
- 清算人の決定順序の大原則(会社法の規定)
- ① 定款で定めがある場合(最優先)
- ② 株主総会での選任
- ③ 法定清算人(最終の取締役)
- 株式会社・合同会社・有限会社それぞれの注意点
- 清算人が複数いる場合の扱い
- 実務でトラブルになりやすいケース
- FAQ(よくある質問)
- まとめ
1. 清算人を決めるルールはなぜ重要なのか

清算人は、解散後の会社の財産管理・債務弁済・分配など重要な手続きを担当します。そのため、誰が清算人になるのかを明確にしておかないと、次のような問題が発生します。
- 登記申請が遅れる
- 法定清算人か任意(選任)清算人か判断できず過料の可能性
- 代表権が不明確となり金融機関・契約先とトラブル
- 帳簿引継ぎができず資産整理が滞る
そのため、「どう決めるか」のルールを会社法は明確に定めています。
2. 清算人の決定順序の大原則(会社法の規定)

会社法では、清算人の選任について次の順序が定められています。
- ① 定款の定めが最優先
- ② 定款に定めがなければ、株主総会(社員総会)で選任する
- ③ 清算人が選任されなかったとき、最終の取締役が法定清算人となる
つまり「定款 → 総会 → 法定」という順序が鉄則です。
3. ① 定款で定めがある場合(最優先)

定款は会社の憲法のようなもので、清算人について次のような定めが置かれることがあります。
● 定款における定めの例
- 解散の時は取締役が清算人となる
- 解散のときは代表取締役が清算人になる
- 清算人会を置く
- 特定の人物を清算人とする
定款に規定がある場合、株主総会で別の清算人を選ぶことはできません(ただし定款変更を行う場合は別)。
● 実務上の注意
- 古い会社では清算人規定が抜けていることが多い
- 清算人会が規定されていれば、その規定に従った組織構成が必要
- 有限会社には清算人会制度がそもそも存在しない
定款の内容確認は、解散手続きの初期段階で必須です。
4. ② 株主総会での選任(最も一般的)

定款に清算人の記載がない場合、通常は株主総会で選任します。
● 株主総会で選ぶメリット
- 特定の人物を指定できる
- 取締役以外の人(専門家・第三者)を選任することも可能
- 清算事務に適した人材を配置できる
● 決議方法
- 普通決議(議決権の過半数)で選任可能
- 取締役会設置会社でも株主総会で選ぶ
● 実務ポイント
- 解散決議と同日に清算人選任を行うのが一般的
- 株主総会議事録が登記申請書類となる
- 複数清算人を選任する場合は役割分担を明確にする
清算人登記は解散の日から 2週間以内 に行う必要があるため、総会決議は迅速に実行する必要があります。
5. ③ 法定清算人(最終の取締役)

定款にも総会選任にも該当しない場合、自動的に最終の取締役が清算人となります。
● 法定清算人となるケース
- 総会で清算人を選び忘れた
- 株主が不在で選任決議ができない
- 喪失した取締役が1名のみでその人が職務継続する
● 法定清算人の問題点
- 必ずしも清算事務に適していない
- 株主と意見が合わない場合に紛争化
- 代表権の取り扱いが曖昧になりがち
- 責任関係も不明確で後々トラブルに発展しやすい
特に「取締役が複数いる有限会社で、1名のみを清算人にしたい」場合など、法定清算人になるのか選任清算人なのかで混乱することが多いです。(※このテーマは第4回で詳しく扱います)
6. 株式会社・合同会社・有限会社それぞれの注意点
● 株式会社
- 定款優先
- 清算人会規定がある会社は少数ながら存在
- 株主総会で選任するのが一般的
● 合同会社
- 原則は「業務執行社員」が自動的に清算人
- 社員の過半数で別に選任可能
- 合意形成が必要な場面が多い
● 有限会社
- 清算人会が存在しない
- 定款規定がシンプル
- 株主総会決議での選任が中心
- 清算人登記時に定款添付が不要となるケースがある(清算人会規定不存在が明白なため)
7. 清算人が複数いる場合の扱い

複数清算人を置く場合、次のような点に注意が必要です。
- 代表清算人を1名決める必要がある(対外的権限の明確化)
- 清算人会が定款で定められている場合は、その規定に従う
- 役割分担を決めておく(財産調査担当・負債処理担当など)
複数置くことで透明性が増し、相続会社・親族会社での紛争予防にも役立ちます。
8. 実務でトラブルになりやすいケース
以下の点は実務で非常によく問題になります。
● 清算人を選任したつもりが、実は法定清算人と扱われるケース
- 総会議事録に清算人選任が明記されていない
- 書面決議が不備
- 合同会社で社員の合意が不足
- 有限会社で手続書類の欠落
● 定款規定と矛盾した清算人選任
- 定款では「取締役が清算人」とあるのに株主総会で別人を選任
- 定款変更をしていないため登記で却下される
● 取締役が複数いる会社で1名のみ清算人にしたい場合
- 法定清算人の扱いと矛盾
- 残りの取締役の承認や決議が必要となる
第4回で、実際の登記トラブル例を交えて詳しく説明します。
9. FAQ(よくある質問)

Q1. 清算人は必ず株主が選ばれないといけませんか?
→ いいえ。株主総会で選任されるのは「選任権」であり、就任する人は外部の人物でも問題ありません。
Q2. 清算人を途中で変更できますか?
→ 株主総会の決議で変更可能です。変更登記も必要です。
Q3. 清算人が拒否した場合は?
→ 選任は辞退できます。辞任後の追加選任を株主総会で行う必要があります。
Q4. 清算人を複数置くメリットは?
→ 不透明な財産処理を避けたい場合に有効です。親族間の会社で特に使われます。
Q5. 清算人が不在の場合、解散は無効になりますか?
→ 無効にはなりませんが、法定清算人が自動的に就任します。
10. まとめ
清算人の決め方は「定款 → 株主総会 → 法定清算人」という明確な優先順位があります。
しかし実務では、定款確認不足や議事録の書き方の不備により、「選任したつもりが実は法定清算人だった」というケースも多く見られます。
特に有限会社や家族会社の場合、手続が簡易な分だけ誤解も生まれやすく、トラブルが起きやすい領域と言えます。
解散手続きをスムーズに進めるためには、早い段階で清算人の決定方法を確認し、必要な書類を整えることが重要です。

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