【第4回】有限会社(特例有限会社)の清算人登記はどう違う?定款が不要になるケースとは

2025年12月30日

有限会社(特例有限会社)が解散するときの「清算人登記」は、株式会社と異なる点が多く、特に"定款添付が不要となるケース"は実務で誤解されやすいポイントです。本記事では、司法書士が有限会社独自のルールや清算人の選任方法、登記添付書類の違いを分かりやすく解説します。

目次

  1. 有限会社(特例有限会社)とは?清算人登記の前提となる制度の特徴
  2. 有限会社の清算人はどう決まる?株式会社との根本的な違い
  3. 清算人登記で「定款が不要」となるケース
  4. 逆に「定款が必要」となるのはどんな場合か?
  5. 実務で起こるトラブル例
  6. 清算人となった後に必要な手続き
  7. FAQ
  8. まとめ

1. 有限会社(特例有限会社)とは?清算人登記の前提となる制度の特徴

 2006年の会社法施行後、旧有限会社法は廃止され、既存の有限会社は「特例有限会社」として残されています。
 そのため、現在の有限会社は以下のような特徴があります。

  • 株式会社と違い、機関設計が非常にシンプル
  • 取締役会制度はない
  • 取締役は原則1名以上
  • 清算人会の制度が存在しない
  • 代表取締役という概念は"任意の対外表示"であり、法的に必須ではない

 この構造の違いが、そのまま 清算人の決め方 → 清算人登記 → 添付書類の違い に影響します。

とりわけ大きいのは、

有限会社には清算人会の制度がないため、清算人は「原則、取締役全員が法定清算人」となる

という点です。

これが後述する「定款不要」の理由に関係します。

2. 有限会社の清算人はどう決まる?株式会社との根本的な違い

 株式会社の場合は以下の順番で清算人が決まります。

  • ①定款の定め
  • ②株主総会の選任
  • ③解散時の取締役のうち代表取締役
  • ④その他法定の規定

しかし有限会社は構造が違います。

有限会社(特例有限会社)の優先順位

  • ① 定款に定めがあれば、それに従う
  • ② 株主総会で選任した者
  • ③ それ以外の場合
     → 解散時の取締役全員が法定清算人(会社法478条の準用)

特に重要

有限会社には清算人会制度が存在しないため、取締役の一部だけが自動的に清算人になることはない。

つまり、代表取締役だけが勝手に清算人になるわけではありません。

3. 清算人登記で「定款が不要」となるケース

 法人の清算人登記では通常「定款添付」が必要とされる理由は、

  • 定款に清算人に関する定めがあるか
  • 清算人会が存在するか
  • 清算人の選任方法の特別規定があるか

などを確認するためです。

しかし……

有限会社には"清算人会"が存在しない。

定款に清算人会や特殊規定が置かれる余地がない。

よって、登記官が定款を確認する必要がないケースがある。

つまり、実務で最もよくあるパターン:

**▼ ケースA:法定清算人(解散時の取締役全員)で登記する場合

→ 定款添付は不要**

具体例:

  • 取締役が1名 → その者が清算人
  • 取締役が2名 → 2名とも清算人
  • 株主総会で特に選任決議をしていない

このケースは 法律に従うだけ なので、
登記官が定款で確認すべき事項が存在しません。

4. 逆に「定款が必要」となるのはどんな場合か?

 次のケースでは「定款の添付が必要」になります。

ケースB:定款に"清算人に関する特則"がある場合

例:

  • 清算人を特定の役職とすると定めている
  • 清算人を出資者から選ぶ旨の規定がある
  • 任期や選解任方法について特別の定めがある

有限会社でも、こうした定めを置くこと自体は可能です。

登記官はこれを確認する必要があるため、
定款が必須添付となります。

ケースC:株主総会で「法定清算人とは異なる人物」を選任した場合

例:

  • 取締役が2名いるが、Aだけを清算人としたい
  • 取締役ではない人物を清算人にしたい
  • 外部の専門家(司法書士・税理士など)を清算人に選任したい

この場合、

  • 法定清算人ではない
  • 株主総会の選任が必要
  • 登記官は「定款に特則がないか」を確認したい

ため、

定款の添付が必要

となります。

5. 実務で起こるトラブル例

 有限会社の清算人登記で特に多い誤りは以下のとおりです。

誤り①

「代表取締役が自動で清算人になる」と思い込む

→ 有限会社では誤り
→ 法定清算人は「取締役全員」
→ 一部だけを清算人にするには株主総会決議が必須

誤り②

株主総会で選任したのに、定款を添付しない

→ 補正の対象
→ 定款チェックが必要なケースに該当

誤り③

取締役1名だけを清算人とし「法定清算人」として申請した

→ 法務局から補正
→ "法定清算人"は「取締役全員の自動就任」の場合に限られる

誤り④

定款に「清算人に関する規定」が残っているのに添付しなかった

→ 廃止前の有限会社法時代の記述が残っているケースもある
→ 登記官の判断で定款添付が求められる

6. 清算人となった後に必要な手続き

 有限会社でも、清算人が行う業務は株式会社と基本的に共通です。

清算人の主な職務(箇条書き)

  • 財産目録・貸借対照表の作成
  • 債権の取立て
  • 債務の弁済
  • 不動産や資産の処分
  • 未払金・未収金の清算
  • 会社名義の口座の管理・解約
  • 従業員の退職処理
  • 税務申告(解散確定申告・清算申告)
  • 残余財産の分配
  • 清算結了の登記

特例有限会社でも、清算業務の実体は株式会社とほぼ同じです。

7. FAQ(よくある質問)

Q1. 有限会社の清算人登記は定款不要と聞いたのですが?

A. 法定清算人(取締役全員)で登記する場合のみ不要です。
株主総会で清算人を選任するケースでは定款添付が必要となります。

Q2. 代表取締役だけを清算人にできますか?

A. できますが、株主総会決議が必要です。
自動的に代表取締役だけが清算人になることはありません。

Q3. 取締役が2名いて、1名だけを清算人にしたい場合は?

A. 株主総会での「清算人選任決議」が必要です。
この場合、法定清算人ではありませんので、定款も添付が必要です。

Q4. 外部の専門家を清算人に選ぶことはできますか?

A. 可能です。ただし株主総会での決議が必要です。

Q5. 清算結了登記までどれくらいかかりますか?

A. 資産や負債の状況によりますが、一般的には3〜6か月程度です。

8. まとめ

 有限会社(特例有限会社)の清算人登記は、株式会社と比べて

  • 機関設計がシンプル
  • 清算人会が存在しない
  • 法定清算人の範囲が明確(取締役全員)

という特徴があります。

そのため、

**【定款が不要となるのは】

→ 法定清算人(取締役全員)で登記する場合**

**【定款が必要となるのは】

→ 清算人を選任する場合
→ 定款に特則がある場合**

特例有限会社は、昔の有限会社法の影響もあって誤解が特に多い分野です。
解散・清算の登記に不安がある場合は、専門家に相談するのが確実です。

解散・清算結了登記

有限会社(特例有限会社)が解散するときの「清算人登記」は、株式会社と異なる点が多く、特に"定款添付が不要となるケース"は実務で誤解されやすいポイントです。本記事では、司法書士が有限会社独自のルールや清算人の選任方法、登記添付書類の違いを分かりやすく解説します。

株式会社が解散し、清算人を登記する際には「定款のコピー」を添付する必要があります。しかし、なぜ解散登記時に定款確認が求められるのか、他の登記では不要なのに清算人だけ例外なのか、実務でも誤解が多い部分です。本記事では、司法書士が清算人登記と定款添付の理由を体系的に解説します。

会社を解散すると、事業運営は停止し、財産整理を行う「清算人」が必要になります。しかし清算人は誰がどうやって決めるのか、定款・取締役・株主総会のどれが優先されるのか、誤解が多いポイントです。本記事では、清算人の定め方を司法書士の実務に基づいて徹底解説します。

会社が解散すると、通常の「取締役」は職務を終え、代わりに「清算人」が会社の後処理(清算業務)を担当します。本記事では、清算人が何をする人なのか、誰がなるのか、実務上の注意点まで司法書士がわかりやすく解説します。中小企業や閉鎖会社でも役立つ内容です。