【第4回】有限会社(特例有限会社)の清算人登記はどう違う?定款が不要になるケースとは
有限会社(特例有限会社)が解散するときの「清算人登記」は、株式会社と異なる点が多く、特に"定款添付が不要となるケース"は実務で誤解されやすいポイントです。本記事では、司法書士が有限会社独自のルールや清算人の選任方法、登記添付書類の違いを分かりやすく解説します。

有限会社(特例有限会社)が解散するときの「清算人登記」は、株式会社と異なる点が多く、特に"定款添付が不要となるケース"は実務で誤解されやすいポイントです。本記事では、司法書士が有限会社独自のルールや清算人の選任方法、登記添付書類の違いを分かりやすく解説します。
■ 目次
1. 有限会社(特例有限会社)とは?清算人登記の前提となる制度の特徴

2006年の会社法施行後、旧有限会社法は廃止され、既存の有限会社は「特例有限会社」として残されています。
そのため、現在の有限会社は以下のような特徴があります。
この構造の違いが、そのまま 清算人の決め方 → 清算人登記 → 添付書類の違い に影響します。
とりわけ大きいのは、
有限会社には清算人会の制度がないため、清算人は「原則、取締役全員が法定清算人」となる
という点です。
これが後述する「定款不要」の理由に関係します。
2. 有限会社の清算人はどう決まる?株式会社との根本的な違い

株式会社の場合は以下の順番で清算人が決まります。
しかし有限会社は構造が違います。
▼ 有限会社(特例有限会社)の優先順位
特に重要
有限会社には清算人会制度が存在しないため、取締役の一部だけが自動的に清算人になることはない。
つまり、代表取締役だけが勝手に清算人になるわけではありません。
3. 清算人登記で「定款が不要」となるケース

法人の清算人登記では通常「定款添付」が必要とされる理由は、
などを確認するためです。
しかし……
有限会社には"清算人会"が存在しない。
定款に清算人会や特殊規定が置かれる余地がない。
→ よって、登記官が定款を確認する必要がないケースがある。
つまり、実務で最もよくあるパターン:
**▼ ケースA:法定清算人(解散時の取締役全員)で登記する場合
→ 定款添付は不要**
具体例:
このケースは
法律に従うだけ なので、
登記官が定款で確認すべき事項が存在しません。
4. 逆に「定款が必要」となるのはどんな場合か?

次のケースでは「定款の添付が必要」になります。
▼ ケースB:定款に"清算人に関する特則"がある場合
例:
有限会社でも、こうした定めを置くこと自体は可能です。
登記官はこれを確認する必要があるため、
定款が必須添付となります。
▼ ケースC:株主総会で「法定清算人とは異なる人物」を選任した場合
例:
この場合、
ため、
定款の添付が必要
となります。
5. 実務で起こるトラブル例

有限会社の清算人登記で特に多い誤りは以下のとおりです。
● 誤り①
「代表取締役が自動で清算人になる」と思い込む
→ 有限会社では誤り
→ 法定清算人は「取締役全員」
→ 一部だけを清算人にするには株主総会決議が必須
● 誤り②
株主総会で選任したのに、定款を添付しない
→ 補正の対象
→ 定款チェックが必要なケースに該当
● 誤り③
取締役1名だけを清算人とし「法定清算人」として申請した
→ 法務局から補正
→ "法定清算人"は「取締役全員の自動就任」の場合に限られる
● 誤り④
定款に「清算人に関する規定」が残っているのに添付しなかった
→ 廃止前の有限会社法時代の記述が残っているケースもある
→ 登記官の判断で定款添付が求められる
6. 清算人となった後に必要な手続き

有限会社でも、清算人が行う業務は株式会社と基本的に共通です。
清算人の主な職務(箇条書き)
特例有限会社でも、清算業務の実体は株式会社とほぼ同じです。
7. FAQ(よくある質問)

Q1. 有限会社の清算人登記は定款不要と聞いたのですが?
A. 法定清算人(取締役全員)で登記する場合のみ不要です。
株主総会で清算人を選任するケースでは定款添付が必要となります。
Q2. 代表取締役だけを清算人にできますか?
A. できますが、株主総会決議が必要です。
自動的に代表取締役だけが清算人になることはありません。
Q3. 取締役が2名いて、1名だけを清算人にしたい場合は?
A. 株主総会での「清算人選任決議」が必要です。
この場合、法定清算人ではありませんので、定款も添付が必要です。
Q4. 外部の専門家を清算人に選ぶことはできますか?
A. 可能です。ただし株主総会での決議が必要です。
Q5. 清算結了登記までどれくらいかかりますか?
A. 資産や負債の状況によりますが、一般的には3〜6か月程度です。
8. まとめ
有限会社(特例有限会社)の清算人登記は、株式会社と比べて
という特徴があります。
そのため、
**【定款が不要となるのは】
→ 法定清算人(取締役全員)で登記する場合**
**【定款が必要となるのは】
→ 清算人を選任する場合
→ 定款に特則がある場合**
特例有限会社は、昔の有限会社法の影響もあって誤解が特に多い分野です。
解散・清算の登記に不安がある場合は、専門家に相談するのが確実です。

有限会社(特例有限会社)が解散するときの「清算人登記」は、株式会社と異なる点が多く、特に"定款添付が不要となるケース"は実務で誤解されやすいポイントです。本記事では、司法書士が有限会社独自のルールや清算人の選任方法、登記添付書類の違いを分かりやすく解説します。
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