法務局から「みなし解散により職権で解散登記をしました」と通知が届いた場合でも、一定の期間内であれば会社を「復活」させることが可能です。
ただし、再設立や新設とは異なり、復活には登記・書類・株主総会決議など複数のステップを経る必要があります。本記事では、実際に職権による解散登記が行われた後に会社を存続させるための実務的な流れを、司法書士がわかりやすく解説します。
【第2回】清算人の選任と登記手続きのポイントとは?(解散後の続きの作業)

会社を解散した後も、法人としての活動はすぐには終了しません。解散後は、会社の資産や負債を整理する「清算手続き」に入る必要があります。このとき重要となるのが、「清算人」の選任とその登記手続きです。清算人は、会社の後処理を担う責任ある立場であり、登記を怠ると法務局から指摘を受けるだけでなく、思わぬトラブルに発展することもあります。本記事では、清算人の役割や選任方法、登記に必要な書類、税務署への届出など、実務において押さえておくべきポイントを丁寧に解説します。
目次:
- 清算人とは?その法的地位と役割
- 清算人の選任方法と注意点
- 清算人の登記手続きと必要書類
- 清算人の業務内容(債権回収・債務弁済など)
- 税務署や年金事務所等への届出との関係
- まとめ:清算人の選任と登記は解散後の要所
1. 清算人とは?その法的地位と役割

株式会社が解散すると、直ちに「清算会社」となります。清算会社の目的は、営業ではなく、資産・負債の整理や残余財産の分配を通じて法人格を消滅させることです。これらの手続きを担うのが「清算人」です。
清算人は、解散前の代表取締役に代わり、会社を代表する立場となり、会社名も「株式会社○○清算中」と変わります。つまり、清算人は解散後の実務を遂行するための代表機関として機能します。
2. 清算人の選任方法と注意点
清算人の選任は、基本的に定款または株主総会の決議によって行います。定款に清算人の定めがない場合、株主総会において選任決議を行う必要があります。
通常は、元代表取締役がそのまま清算人になるケースが多いですが、必ずしもそうである必要はありません。例えば、会計や法務に詳しい第三者を選任することも可能です。ただし、株主の理解を得ることが重要です。
なお、選任された清算人が辞任したり、死亡した場合は、速やかに後任者を選任し、再度登記手続きが必要になります。清算人が不在となると、清算作業が滞るだけでなく、債権者への対応に支障が生じます。
3. 清算人の登記手続きと必要書類

清算人が選任されたら、2週間以内に法務局へ登記を申請しなければなりません。怠った場合には過料(行政罰)が科される可能性があります。
【主な提出書類】
- 登記申請書
- 株主総会議事録(清算人選任決議を含む)
- 清算人の就任承諾書
- 清算人の印鑑届書
- 印鑑証明書(必要に応じて)
法人印は、解散後も清算人が引き継いで使用しますが、清算人個人の印鑑登録も必要になるケースがあるため、あらかじめ準備しておくとスムーズです。
4. 清算人の業務内容(債権回収・債務弁済など)
清算人の主な業務は、会社の債権を回収し、債務を弁済することです。以下のような業務を順序立てて進めていきます。
- 売掛金・貸付金などの債権回収
- 仕入債務・借入金などの支払
- 資産(不動産や在庫等)の売却
- 残余財産の株主への分配
- 帳簿や契約書などの整理・保管
これらの業務は会社の取引先、金融機関、税務署などと連携しながら進めていく必要があり、法的・実務的な知識が問われます。
また、債務超過状態にある場合には、会社更生や破産手続きに移行せざるを得ないこともあります。清算人はその判断も含め、経営責任を負う立場となります。
5. 税務署や年金事務所等への届出との関係
解散後、清算人が行うべき手続きは登記だけにとどまりません。税務署や年金事務所などへの届出も忘れずに行う必要があります。
【主な届出先と内容】
- 税務署:異動届出書、清算人の就任届、解散確定申告、清算確定申告など
- 都道府県税事務所・市区町村:法人事業税、住民税等の異動届
- 年金事務所:健康保険・厚生年金の適用終了届など
- 労働基準監督署・ハローワーク:労働保険の清算手続きなど
登記とこれら届出は別個に管理されているため、いずれかを忘れると後々トラブルになります。特に税務署への届出は、申告義務の発生と関係するため、期日厳守が求められます。
6. まとめ:清算人の選任と登記は解散後の要所
会社の解散は、あくまで手続きの「入口」にすぎません。その後の清算手続きを着実に進めるためにも、まずは清算人を適切に選任し、速やかに登記を完了させることが不可欠です。動機自体は、解散と清算人の就任・選任と同時に行います。
清算人の役割は、会社の「最後の舵取り役」です。債権者や株主の信頼を損なわず、法令に則った円滑な手続きを実現するためには、専門家の助言を受けながら進めるのが望ましいでしょう。
次回(第3回)では、いよいよ会社を完全に消滅させる「清算結了登記」について、残務整理と法的完了の視点から詳しく解説していきます。

解散・清算結了
── 2か月以内に行う「事業継続の届出」と、過料を避けるための正しい手順
【香川県で「みなし解散」の通知書が届いたら?1】放置せずにまず確認すべき3つのこと
突然、法務局から「みなし解散に関する通知書」が届き、不安になっている方も多いのではないでしょうか。
「会社を閉めた覚えはないのに」「放っておくとどうなるの?」──そんな疑問に、香川県の司法書士が地域実務の視点からお答えします。この記事では、通知書を受け取った後に最初に確認すべき3つのポイントと、やってはいけない対応例を紹介します。
早めに正しい手順を踏めば、会社を守ることも可能です。
第5回:解散から清算結了までの流れと高松市での実務ポイント
会社が「解散」すると、すぐに法人格が消滅するわけではありません。清算手続を経て初めて「消滅」となります。解散から清算結了までの流れは複数の登記や公告を伴い、時間的にも法的にも一定のプロセスを踏む必要があります。本記事では、株式会社・有限会社を問わず「解散から清算結了までの手続の流れ」と、高松市で実務を行う際の注意点を司法書士が解説します。



