第3回:法人化で銀行融資は通りやすくなる?——司法書士が語る“本当のところ”

2025年11月25日

「会社にしたら銀行融資は通りやすくなるって本当?」——副業・小規模事業者からよくいただく質問です。確かに法人化は信用力の面でプラスですが、それだけで融資が通るわけではありません。本記事では、会社設立を多数支援してきた司法書士の立場から、銀行が"本当に見ているポイント"を具体的に解説します。

目次

  1. 「法人化=融資が通る」は半分正解・半分誤解
  2. 銀行が法人を評価する3つの要素
     2-1. 法人の「形」より、事業の実態を重視
     2-2. 税務申告と決算書の透明性
     2-3. 経営者の信用力は依然として重要
  3. 法人化が融資にプラスに働く場面
  4. 法人化しても融資が通らない典型的なケース
  5. 小規模事業者が押さえるべき"銀行目線"
  6. 融資に強い会社の作り方
  7. 司法書士に相談するメリット
  8. まとめ:法人化は"融資対策の1ピース"にすぎない

1. 「法人化=融資が通る」は半分正解・半分誤解

 副業や小規模ビジネスの方から最も多い誤解が、
「法人にすると融資が出やすくなる」
というものです。

 結論からいうと、

  • 社会的信用が上がる → プラス要素
  • 法人化しただけで融資が通る → 誤解

 銀行は「法人かどうか」だけを基準にはしていません。

むしろ、

  • 売上・利益
  • 事業計画
  • 財務状況
  • 経営者本人の信用
    を総合的に見ています。

 そのため、法人化は"入口の信用度を上げる"程度の効果と考えた方が現実的です。

2. 銀行が法人を評価する3つの要素

2-1. 法人の「形」より、事業の実態を重視

銀行は法人の"形"よりも、
「どんな事業で、どのくらい売れているか」
を見ます。

特に、

  • 事業内容に継続性があるか
  • 売上の根拠は何か
  • 利益率が安定しているか
  • リスク要因は何か

こうした"実態"が評価の中心になります。

 つまり、
名義を法人に切り替えただけでは評価は上がりません。
売上・利益の数字が伴って初めて法人の信用力が意味を持ちます。

2-2. 税務申告と決算書の透明性

銀行が重視するもう1つのポイントが「透明性」です。

個人事業主より法人のほうが、

  • 記帳
  • 決算書
  • 税務申告
    が体系化されているため評価されやすくなります。

特に法人の場合は、

  • 会社法に基づく決算
  • 税務署に提出する計算書類
    が整備されるため、銀行としても「数字が読みやすい」メリットがあります。

2-3. 経営者の信用力は依然として重要

銀行融資では、法人の評価だけでは不十分です。

代表者個人の信用情報
(クレジット履歴・返済状況・金融事故など)は、法人設立後も必ずチェックされます。

実務でよくあるのが、
「法人化したのに審査で落ちた」というケース。

理由の多くは、

  • 経営者個人の信用情報に問題
  • 個人の借入比率が高い
  • 個人の税金滞納
    などです。

法人化しても、経営者の信用は融資に大きく影響します。

3. 法人化が融資にプラスに働く場面

① BtoB取引が中心で「法人であること」が条件の業界

IT・広告・コンサル・製造業などは特にこの傾向が強いです。

法人化することで、

  • 銀行側の印象が良くなる
  • 担当者が審査理由を説明しやすくなる
    というプラス要因が働きます。

事業計画が明確で今後の成長が見込める場合

銀行は、将来の収益性を非常に重視します。

法人の方が「会社として成長する計画」が描きやすいため、評価されやすいケースがあります。

決算書が整い、数字が読めるようになった段階

法人として1期以上経過し、
売上・利益の実績ができると融資が通りやすくなります。

4. 法人化しても融資が通らない典型的なケース

設立して間もなく、実績がない

設立直後の"ペーパーカンパニー"状態では、銀行は融資を出しません。

代表者の信用情報に問題がある

延滞・金融事故・税金滞納など。

売上計画が曖昧

「とりあえず法人化した」「節税のために会社を作った」
という理由では、銀行は納得しません。

個人と法人の支出が混在している

これは実務で非常に多い問題です。
銀行は「管理がルーズな会社」を嫌います。

5. 小規模事業者が押さえるべき"銀行目線"

銀行は以下を気にしています。

  • 事業は本当に継続するのか
  • 売上の根拠は何か
  • 誰が顧客なのか
  • 経費の構造はどうなっているか
  • 数字の説明はできるか
  • 個人の生活費をまかなえる収入があるか

実は、銀行が知りたいのは"返してくれるかどうか"だけです。

その判断材料が、

  • 決算書
  • 事業計画
  • 経営者の信用
    なのです。

6. 融資に強い会社の作り方

法人化したあと、次の点をきちんと運用することで融資に強くなります。

(1)決算書の信頼性を上げる

税理士と連携し、数字の整合性を毎月管理する。

(2)個人と法人の財布を完全に分ける

銀行が最も嫌うのは「管理が曖昧な会社」。

(3)法人名義の取引履歴を整える

売上の入金・経費の支払いを法人名義に統一する。

(4)1期目の決算で黒字を狙う

実績のある"黒字会社"は銀行の評価が高い。

(5)早めに銀行担当者と関係を作る

法人化後すぐに口座を作り、担当者とコミュニケーションを取ることが有利に働きます。

7. 司法書士に相談するメリット

 司法書士は、法人設立にあたり次のようなサポートを提供できます。

  • 融資を見据えた会社形態の提案(合同会社か株式会社か)
  • 銀行審査で評価されやすい「事業目的」の設定
  • 設立後の登記・変更を見越した定款設計
  • 法人運営に必要な基礎知識の整理
  • 税理士・社労士との連携

法人設立は"書類作成だけの作業"ではありません。
将来の資金調達まで見据えた設計が重要です。

8. まとめ:法人化は"融資対策の1ピース"にすぎない

法人化は確かに信用力を上げ、融資にプラスに働く要素です。
しかし、融資が通るかどうかを決めるのは、

  • 数字
  • 実績
  • 管理体制
  • 経営者の信用

といった総合的な判断です。

言い換えれば、
法人化=スタートラインであって、ゴールではありません。

 適切な準備と運営を行うことで、法人化は融資に強い会社づくりの大きな味方になります。

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