取締役が複数いる有限会社(特例有限会社)で会社を解散する場合、「清算人は取締役全員なのか?」「一部の取締役だけを清算人にできるのか?」という点は、実務でもトラブルが非常に多い論点です。本記事では、会社法の規定と登記実務の両面から、清算人選任の可否と手続きのポイントを司法書士が徹底的に解説します。
第4回:清算人就任登記に必要な添付書類と注意点

会社が解散すると、清算手続きに入るため「清算人」を登記する必要があります。清算人登記は、会社を清算していくための実質的な代表者を登記簿上に反映させる重要な手続きです。しかし、添付書類の要否を誤解して申請すると補正になりやすく、実務で最もトラブルが多い登記の一つです。本記事では、清算人の就任登記に必要な添付書類を整理し、株式会社と有限会社の違い、そして印鑑証明書の誤解について司法書士が詳しく解説します。
目次
- 清算人とは ― 解散後の会社を代表する存在
- 清算人の選任方法
- 清算人就任登記に必要な基本書類
- 定款の添付とその意味合い
- 清算人の印鑑証明書 ― どの場面で必要か
- 株式会社と有限会社の違い
- 実務で補正になりやすいポイント
- まとめ
1. 清算人とは ― 解散後の会社を代表する存在

会社は解散してもすぐに消滅するわけではありません。清算手続を経て、債権債務の整理や財産の分配を完了して初めて消滅します。この清算手続を会社の代表として進めるのが「清算人」です。
登記簿上でも「代表取締役」や「取締役」の記載は消え、代わって「清算人」「代表清算人」が記録されます。したがって、清算人登記は会社解散後の必須手続きです。
2. 清算人の選任方法

清算人は、次のいずれかの方法で選任されます。
- 定款に定める者(定款指定清算人)
- 株主総会(または社員総会)で選任された者
- 法定清算人(取締役全員)
- 裁判所が選任した者
このうち、①②③は会社内部で決まりますが、④は利害関係者の申立てに基づき裁判所が選任するケースです。
3. 清算人就任登記に必要な基本書類

清算人の就任登記で一般的に必要とされる書類は以下のとおりです。
- 登記申請書
- 清算人就任承諾書
- 解散を決議した株主総会議事録(または社員総会議事録)
- 定款(要否は後述)
- 株主リスト(株主総会で決議を行った場合)
- 裁判所選任の場合は選任決定書の謄本
- 印鑑届出書+清算人の印鑑証明書
4. 定款の添付とその意味合い
株式会社の場合、清算人の選任経路にかかわらず、定款の添付が必須です。
理由は次の通りです。
- ①定款指定:定款にその者が清算人として定められているか確認するため
- ②株主総会選任:定款に清算人に関する別段の定めがないことを確認するため
- ③法定清算人:同じく、定款に清算人会設置や別段の定めがないことを確認するため
- ④裁判所選任:同上
一方、有限会社(特例有限会社)の場合は「清算人会設置会社」という制度自体がないため、②社員総会選任、④裁判所選任のケースでは定款の添付は不要です。
👉 株式会社は必ず必要、有限会社は場合によって不要という違いを押さえておきましょう。
5. 清算人の印鑑証明書 ― どの場面で必要か

清算人登記で誤解が多いのが「印鑑証明書の要否」です。
- 必要なのは印鑑届出書に添付するため
清算人が登記簿上の代表者となるため、法務局に実印を届け出ます。この印鑑届出書に清算人の印鑑証明書が必要です。 - 不要なのは就任承諾書
清算人就任承諾書には印鑑証明書を添付する必要はありません。これは、商業登記規則61条4~6項の適用が清算人には及ばないためです。
👉 実務では「承諾書に印鑑証明書を付け忘れた」と誤解されて相談が来ることがありますが、正しくは承諾書には不要です。
6. 株式会社と有限会社の違い
清算人就任登記における両者の違いを整理すると以下の通りです。
- 株式会社:清算人選任方法にかかわらず定款が必須
- 有限会社:社員総会選任、裁判所選任では定款不要
- 印鑑証明書:株式会社・有限会社共通で承諾書には不要、印鑑届出に必要
7. 実務で補正になりやすいポイント
- 定款の添付漏れ(株式会社では必ず必要)
- 社員総会議事録や株主総会議事録の記載不備(議決権の記載や署名押印漏れ)
- 清算人の印鑑証明書の誤った添付(承諾書に付けてしまう)
- 古い会社で定款が散逸しているケース(事前に対応が必要)
補正が入ると清算手続の進行が遅れ、債権者への通知や残余財産の分配に影響するため、最初から正確に整えることが重要です。
8. まとめ
清算人就任登記は、会社解散後の最初の大きな登記手続です。
株式会社と有限会社では定款の要否に違いがあり、また印鑑証明書についても「承諾書には不要、印鑑届出に必要」という整理を誤解しやすいため注意が必要です。
確実に添付書類を整えることで、補正のリスクを回避し、清算手続きをスムーズに進めることができます。

(相談窓口のご案内)
清算人登記は、解散登記に続いて最初に行う重要な手続きです。添付書類の要否や定款の確認など、細かい判断が必要なため、補正や手戻りが起きやすい分野でもあります。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、株式会社・有限会社の解散および清算人登記を多数サポートしています。
香川県高松市で会社解散をお考えの方、清算手続に不安がある方はぜひご相談ください。
📞 電話予約:087-873-2653

🌐 お問い合わせフォームはこちら
📆 土日祝も可能な限り対応いたします。

解散・清算結了登記
【第4回】有限会社(特例有限会社)の清算人登記はどう違う?定款が不要になるケースとは
有限会社(特例有限会社)が解散するときの「清算人登記」は、株式会社と異なる点が多く、特に"定款添付が不要となるケース"は実務で誤解されやすいポイントです。本記事では、司法書士が有限会社独自のルールや清算人の選任方法、登記添付書類の違いを分かりやすく解説します。
【第3回】なぜ清算人登記で「定款」が必要なのか?(株式会社編)司法書士が詳しく解説
株式会社が解散し、清算人を登記する際には「定款のコピー」を添付する必要があります。しかし、なぜ解散登記時に定款確認が求められるのか、他の登記では不要なのに清算人だけ例外なのか、実務でも誤解が多い部分です。本記事では、司法書士が清算人登記と定款添付の理由を体系的に解説します。
【第2回】清算人はどのように定める?定款・取締役・株主総会の優先順位を司法書士が解説
会社を解散すると、事業運営は停止し、財産整理を行う「清算人」が必要になります。しかし清算人は誰がどうやって決めるのか、定款・取締役・株主総会のどれが優先されるのか、誤解が多いポイントです。本記事では、清算人の定め方を司法書士の実務に基づいて徹底解説します。




