(トピック)法人化のタイミング~個人事業主から会社にする目安とは?節税・信用・事業拡大の視点から解説

2025年08月15日

個人事業主として順調に売上が伸びてきたら、いつ法人化すべきか悩む方は多いです。本記事では、節税・信用・事業拡大の観点から法人化のベストタイミングをわかりやすく解説します。

【目次】

  1. 法人化とは?個人事業との違い
  2. 法人化の3つの主要メリット
  3. 法人化のタイミングを見極める3つの目安
  4. 法人化による注意点とデメリット
  5. 法人化を検討すべき具体的なケース
  6. まとめ:法人化は目的と将来像に応じて判断を

1. 法人化とは?個人事業との違い

 「法人化」とは、個人事業主として活動していたビジネスを「会社」として法人格を持たせて運営することを指します。
 代表的なのは「株式会社」や「合同会社(LLC)」で、法的には個人とは別の人格を持つことになります。

個人事業との大きな違いは以下の点です:

  • 税務上の取扱いの違い(所得税か法人税か)
  • 社会保険加入の義務の有無
  • 会社名義での契約や信用力
  • 設立・維持にかかる手間とコスト

これらを踏まえ、「法人化すべきか、いつすべきか」という判断が重要になります。

2. 法人化の3つの主要メリット

節税効果

 法人化によって、所得税から法人税に切り替わることで、節税が可能になるケースがあります。特に所得が高くなると、個人事業主の所得税率は最大45%にも達しますが、法人税は中小企業の場合、実効税率で約23〜25%程度で済みます。

 また、法人にすると以下の節税手段も可能になります。

  • 役員報酬による所得分散(自分や家族への給与)
  • 退職金の積立
  • 福利厚生費の計上
  • 決算期を選べる(利益の繰延べ)

信用力の向上

 法人は登記されているため、名刺や契約書に「株式会社〇〇」「合同会社〇〇」とあるだけで、社会的信用が高まります。法人名義での銀行口座開設、融資、取引先との契約のスムーズさなどが向上します。

事業拡大のしやすさ

 人を雇う、資金を調達する、取引を広げるなどの際に、法人であることが有利に働きます。従業員を雇って社会保険に加入させる際も、法人の方が自然で、採用面でも信頼を得やすい傾向があります。

3. 法人化のタイミングを見極める3つの目安

 では、どのタイミングで法人化するのが良いのでしょうか?以下の3つの観点で考えると判断しやすくなります。

(1)年間利益が500万円を超えるかどうか

 この金額を超えると、所得税率が法人税率を上回るケースが増えてきます。会計事務所などでも「利益が500万円を超えたら法人化を検討」と言われることが多いです。

(2)取引先や業界が法人であることを求めてくる

 取引先によっては、「法人でなければ契約できない」とするケースもあります。また、企業向けビジネス(BtoB)や官公庁との取引では法人格が求められることも。

(3)従業員を雇って組織化したいとき

 従業員を雇い、経営と実務を分けたいと考えたときは法人化のチャンスです。給与体系の明確化、労務管理、社会保険加入などの面で、法人の方が整備しやすいです。

4. 法人化による注意点とデメリット

 法人化はメリットが多い一方で、次のようなデメリットや注意点もあります。

  • 設立時に登記費用・定款認証費用などがかかる(株式会社で約20万円前後)
  • 法人住民税(均等割)が赤字でも発生(東京23区では最低7万円)
  • 会計・税務が複雑になり、税理士費用が増える可能性
  • 社会保険の強制適用(役員1人でも加入義務)

 特に、売上が安定していない段階での法人化はコスト負担が重くなるため注意が必要です。

5. 法人化を検討すべき具体的なケース

 以下のような状況であれば、法人化を強く検討する価値があります。

  • 年商が1000万円を超え、利益も安定して出ている
  • 家族に給与を支払い、節税を図りたい
  • 融資や助成金の申請を予定している
  • 共同経営や株主を入れて事業を拡大したい
  • クライアントから法人化を求められている

 また、創業融資(日本政策金融公庫など)を狙う場合は、法人の方が審査上の印象が良くなる傾向もあります。

6. まとめ:法人化は目的と将来像に応じて判断を

 法人化は「節税になるから」だけで決めると、かえって費用や事務負担が増えることもあります。大切なのは「今後どのような経営をしていきたいか」「どのような成長を目指すのか」という将来像です。

 事業が成長軌道に乗り、次のステップに進む準備が整っているなら、法人化は有力な選択肢になります。迷ったときは、専門家(税理士・司法書士など)に相談し、自分に合った形を見つけましょう。

トピック

中小企業の事業承継手段として注目されるM&A。しかし近年では「コスパ」や「タイパ」といった視点で軽率に進めるケースも増えています。本記事では、M&Aを「会社の未来を託す重大な選択」と捉え、本来あるべき姿勢や注意点、信頼できる引き継ぎ先の探し方について解説します。事業承継を真剣に考える方は必読です。香川県高松市の司法書士が解説します。

会社の役員任期が切れたのに、選任を怠っていた——そのような"ちょっとしたミス"が、実は事業の根幹を揺るがす「許認可の取消」につながる可能性があることをご存じでしょうか?
特に、建設業、宅建業、古物商、介護事業、金融業など、行政の許可や認可を受けて運営している会社にとって、役員の選任懈怠は重大なリスクです。本記事では、実際にあった取消事例をもとに、どのような流れで行政処分が行われたのか、何をもって"選任懈怠"と判断されるのかを具体的に解説し、企業として取るべき対策を考えます。