(論点)株式会社の資本金を増やすには?増資の方法とその手続きについて解説

2025年07月22日

「株式会社 資本金 増やし方」や「増資 方法 株式会社」といったキーワードでお調べの方も多いのではないでしょうか。事業拡大や信用力向上、債務超過の解消などを目的として、株式会社の資本金を増加させる「増資」は、経営において重要な判断の一つです。

この記事では、株式会社が資本金を増やす方法について、代表的な手法とその手続きの流れを分かりやすく解説します。これから増資を検討している経営者や管理部門の方にとって、実務的な参考となる内容です。

目次

  1. 株式の発行による増資
  2. 現物出資による増資
  3. 準備金からの資本金組み入れ
  4. DES(デット・エクイティ・スワップ)による増資
  5. 増資手続きの基本的な流れ
  6. 増資時の注意点
  7. まとめ

1. 株式の発行による増資

 最も一般的な増資方法は、新たに株式を発行して対価として現金などを払い込んでもらう方法です。この方法には以下のバリエーションがあります。

(1)第三者割当増資

 特定の第三者(投資家、取引先など)に株式を引き受けてもらう方法です。資金調達だけでなく、業務提携や資本提携の一環としても活用されます。

(2)株主割当増資

 既存の株主に対して保有割合に応じて新株を引き受ける権利を与える方法です。既存株主の持株比率を維持できるメリットがあります。

(3)公募増資

 不特定多数の投資家に対して新株を発行する方法で、上場企業がよく採用します。広く資金を集めることが可能ですが、手続きや情報開示の負担も大きくなります。

2. 現物出資による増資

 現金ではなく、土地や建物、特許権などの「現物」を出資することで資本金を増やす方法です。評価額の算定が必要であり、一定額を超える場合は裁判所が選任した検査役による審査が必要となるケースもあります。

3. 準備金からの資本金組み入れ

 会社の内部留保である「資本準備金」や「利益準備金」の一部を資本金に振り替えることができます。この方法では実際の資金の流入はなく、帳簿上の処理となります。見かけ上の資本金は増加しますが、財務内容が実質的に改善されるわけではありません。

4. DES(デット・エクイティ・スワップ)による増資

 会社が負っている借入金や買掛金などの「債務」を、株式に転換して資本金とする方法です。債務超過の解消やバランスシートの健全化が図れる一方、債権者の同意や株主構成の変化など注意点もあります。

5. 増資手続きの基本的な流れ

 増資にあたっては、会社の規模や定款の内容によって手続きが異なりますが、一般的な手順は以下の通りです。

  1. 取締役会の決議(または株主総会の決議)
  2. 新株引受人との契約・募集要項の作成
  3. 払込の実施
  4. 資本金増加の登記(払込日から2週間以内)

 登記をもって正式に資本金が増加したことになります。

6. 増資時の注意点

  • 登記が必要:増資を行ったら、必ず法務局での登記申請が必要です。怠ると過料の対象になることもあります。
  • 資本金と資本準備金の振り分け:払込金額のうち、2分の1以上を資本金とする必要があります(残りは資本準備金に)。
  • 株式の希薄化:第三者割当などでは既存株主の持株比率が下がる可能性があるため、株主との関係性にも配慮が必要です。
  • 税務上の処理:増資によって法人住民税の均等割額が上がることがあります。税理士と相談のうえ進めることが望ましいです。

7. まとめ

 株式会社の資本金を増やすには、目的に応じてさまざまな方法があります。外部からの資金調達を行うのか、内部の準備金を活用するのか、あるいは債務を株式に振り替えるのか。どの方法にもメリット・デメリットや法的な手続きがあるため、事前にしっかりと検討することが大切です。

 不明点がある場合や手続きをスムーズに進めたい場合は、専門家である司法書士や税理士に相談するのが安心です。

変更登記

資金調達や資本政策を行う際、会社が採用する代表的な手法のひとつが「募集株式の発行」です。しかし、実務では「新株発行」と「自己株式の処分」が混同されることが多く、それぞれの法的性質や資本金への影響、登記上の違いを正しく理解しておくことが重要です。本記事では、会社法に基づく募集株式の発行について、基本的な仕組みから、新株発行と自己株式の処分の違いまで、わかりやすく解説します。特に中小企業の経営者や実務担当者、司法書士試験を目指す方にも有益な内容となっています。

会社の本店移転に関する登記手続きは、移転先によって必要な準備や決議が大きく異なります。特に、本店を「市区町村」単位で越えて移転する場合は注意が必要です。このような移転では、定款の変更が必須となり、株主総会での特別決議も求められます。
また、移転先が現在の法務局の管轄外にある場合には、さらに手続きが複雑になります。