代表者住所非表示制度とは? ― 制度開始後に見えてきた実務上の注意点(司法書士解説)

2026年01月09日

代表者の住所を登記簿に表示しない「代表者住所非表示制度」は、プライバシー保護の観点から注目されています。しかし、すべての会社が自由に使える制度ではなく、銀行口座開設や取引先との関係で注意が必要な場面もあります。本記事では、制度の仕組みと実務で多い誤解を整理します。

【目次】

  1. 代表者住所非表示制度とは何か
  2. なぜこの制度が導入されたのか
  3. 非表示にできるケース・できないケース
  4. 実務で多い誤解と勘違い
  5. 銀行口座開設・融資への影響
  6. 取引先・対外的信用への注意点
  7. 制度を利用すべき会社・慎重にすべき会社
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ

1. 代表者住所非表示制度とは何か

 代表者住所非表示制度とは、会社の代表者(代表取締役など)の住所を登記簿に表示しないことを選択できる制度です。
 従来は、代表者の住所が登記事項証明書にそのまま記載されていましたが、現在は一定の条件のもとで非表示とすることが可能になりました。

 この制度は、「必ず非表示になる制度」ではなく、申請によって選択する制度である点が重要です。

2. なぜこの制度が導入されたのか

 制度導入の背景には、次のような事情があります。

  • 登記事項証明書が誰でも取得できる
  • 代表者のプライバシー侵害リスク
  • ストーカー被害・嫌がらせ防止の必要性

特に、自宅を本店住所にしている小規模法人や一人会社では、住所公開による不安が大きな問題となっていました。

3. 非表示にできるケース・できないケース

 代表者住所非表示制度は、すべての会社で無条件に利用できるわけではありません。

一般的には、

  • 株式会社
  • 一定の条件を満たす登記申請

などが前提となります。

また、

  • 申請内容に不備がある場合
  • 添付書類が整っていない場合

には、非表示が認められないこともあります。

4. 実務で多い誤解と勘違い

 実務で特に多い誤解は次の点です。

  • 「非表示にすれば住所は一切見られない」
  • 「銀行や役所にも住所を出さなくてよい」
  • 「すべての法人が自動的に対象になる」

実際には、登記簿上で非表示になるだけで、
銀行や行政機関では別途住所確認が行われます。

5. 銀行口座開設・融資への影響

銀行口座開設では、

  • 代表者本人確認
  • 事業実態確認

が必ず行われます。

代表者住所を非表示にしている場合でも、
銀行から住所確認書類の提出を求められるのが通常です。

場合によっては、
「なぜ非表示にしているのか」
を説明する必要があるため、事前の想定が重要です。

6. 取引先・対外的信用への注意点

取引先によっては、

  • 登記事項証明書の内容
  • 代表者情報の透明性

を重視する場合があります。

非表示自体が直ちに不利になるわけではありませんが、
業種・取引規模によっては慎重な判断が必要です。

7. 制度を利用すべき会社・慎重にすべき会社

利用を検討しやすい会社

  • 自宅を本店住所としている
  • 一人会社・小規模法人
  • プライバシー面の不安が強い場合

慎重に検討すべき会社

  • 金融機関との取引が中心
  • 大口取引・対外信用が重要
  • 上場準備・拡大志向の会社

制度は「守りの選択肢」として位置づけるのが適切です。

【よくある質問(FAQ)】

Q1. 代表者住所非表示は必ず利用した方がよいですか?
A. いいえ。会社の規模や取引内容によって向き・不向きがあります。

Q2. 非表示にすると銀行口座は作れませんか?
A. 作れますが、追加説明や書類提出を求められることがあります。

Q3. 後から表示・非表示を変更できますか?
A. 変更登記により対応可能です。状況に応じて見直すことができます。


【まとめ】

 代表者住所非表示制度は、プライバシーを守る有効な手段ですが、
万能な制度ではありません
会社の実態・取引状況・将来計画を踏まえたうえで、慎重に判断することが重要です。

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