第4回:商業登記の本人確認が厳格化——なぜ今“なりすまし対策”が必要か

2025年12月12日

2024〜2025年にかけて、商業登記分野では"本人確認の厳格化"が明確な潮流になっています。背景には、会社を悪用した「なりすまし登記」「社長の知らない間に役員変更されていた」などの犯罪事案が増えていることがあります。本記事では、司法書士の現場感覚から、なぜ今これほど本人確認が重視されているのか、実務で何が変わるのかをわかりやすく解説します。

【目次】

  1. 商業登記の「本人確認」がなぜ問題になっているのか
  2. 実際に起きている"なりすまし登記"の手口とは
  3. 法務局が本人確認を強化する背景(2024〜2025)
  4. 司法書士の実務はどう変わる?オンライン申請との関係
  5. 経営者に起きる影響——代表者・取締役の確認が厳しくなる
  6. 会社が今からやるべき予防策——書類整理・身分証管理・社内体制
  7. まとめ:本人確認強化は不可避。小さな会社こそ注意が必要

1. 商業登記の「本人確認」がなぜ問題になっているのか

近年、商業登記を巡って「代表者になりすまして登記申請がされる」「本人が知らないうちに会社の所在地が勝手に移転されている」という事案が報告されています。

大企業では内部統制がありますが、小規模法人では代表者一人が印鑑管理をしているケースも多く、"なりすまし"が入り込む余地が大きいのが現状です。

さらに、オンライン申請が一般化したことで、
「紙・印鑑文化」→「電子申請・デジタル署名」
へ移行する中で、本人確認の仕組みをどう確保するかという課題が浮き彫りになっています。

2. 実際に起きている"なりすまし登記"の手口とは

司法書士の現場でも、相談ベースで以下のようなケースが増えています。

● ケース1:勝手に代表者変更

会社の実印が盗まれ、第三者若しくは他の役員が「代表取締役変更登記」を申請しようとするケース。
法務局が不自然さに気づき未遂に終わることもあります。

※役員全員の解任登記と新規役員の就任登記をする場合、法務局より前の代表取締役に連絡がいくケースがあります。真正な登記を実現するための手続きです。

● ケース2:所在地を勝手に移転

犯罪目的の人物が「本店所在地」を自分の居所に移転させることで、
"会社を乗っ取って利用する"
という手口。

● ケース3:解散・清算を勝手に申請

身元を隠すために法人を勝手に清算しようとするケースもあります。

 これらはいずれも、
本人確認が不十分な申請プロセスを悪用したもの
です。

3. 法務局が本人確認を強化する背景(2024〜2025)

● 背景①:犯罪利用の増加

実体のない会社が匿名で作られ、反社会的活動に利用されるケースが社会問題に。

● 背景②:銀行・行政手続がデジタル化

法人の本人確認が曖昧だと、
マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)との整合性を欠く
ことになります。

● 背景③:法務省の実務研究会でも強化が議論

法務省の審議会では

  • 本人確認の厳格化
  • 電子署名の信頼性向上
  • 司法書士の確認義務の強化
    が検討事項として挙げられています。

司法書士としても、
本人確認は"登記の真正"を守る根幹
であり、今後さらに基準が引き上げられることはほぼ確実です。

4. 司法書士の実務はどう変わる?オンライン申請との関係

オンライン申請が普及すると、
**「書類の真正性」と「本人の同一性」**の確認がより重要になります。

司法書士はもともと

  • 本人確認
  • 申請意思確認
    を厳重に行う義務がありますが、今後は以下の変化が想定されます。

● 電子署名の本人性チェックの強化

電子署名の証明力を補完するため、
身分証の提示やリアルタイムでのオンライン面談が必須化する可能性が高い。

● 書類の提出時に「本人の関与」をより厳格に要求

たとえば代表者変更の場合、
「新旧代表者の本人確認書類提出」
を求める運用が増えています。

● なりすまし疑いがある場合の審査強化

法務局が電話照会や追加資料を求めるケースが増加。

5. 経営者に起きる影響——代表者・取締役の確認が厳しくなる

経営者として理解すべきポイントは以下の通りです。

① 書類だけでは完結しなくなる

代表者変更・本店移転等では
「本人の関与が確認できない申請」は受理されにくくなる
可能性があります。※これはあくまで予想です。

② 印鑑証明書だけでは不十分になる

印鑑証明書は「印鑑の真正」を証明するだけで、
本人の意思までは担保できません。そのため、追加の本人確認が要求されやすくなります。

※司法書士業界では、定型のチェックシートに記入していただき、その場で本人確認をしております。

③ 役員変更のたびに身分証の提出が必要になる可能性

特にオンライン申請では、
本人確認書類の電子データ提出が求められることが一般化する可能性があります。

 小規模法人の経営者にとっては、
「登記が前より面倒になる」
という感覚があるかもしれませんが、
なりすまし防止のためには避けられない流れです。

6. 会社が今からやるべき予防策——書類整理・身分証管理・社内体制

本人確認が厳格化する今、会社として備えるべき対策は以下の通りです。

● 対策①:代表者の身分証・マイナンバーカードの管理

本人確認書類の提出が必須化する方向のため、
「社長の身分証が見当たらない」という状態は避けるべきです。

● 対策②:会社実印・印鑑カードの管理徹底

印鑑だけが誰かに渡ってしまうと不正申請に利用されるリスクがあります。

● 対策③:役員変更・所在地変更を放置しない

登記が古い状態ほど、悪用されるリスクが高いため、
変更があれば即対応することが重要。

● 対策④:オンライン申請の事前準備を整える

  • 電子署名の準備
  • 法人代表者の電子証明書更新
    などを整備しておくとスムーズです。

7. まとめ:本人確認強化は不可避。小さな会社こそ注意が必要

 商業登記の本人確認強化は、国全体で取り組む「なりすまし対策」の一環であり、2025年以降さらに厳しくなることが予想されます。

 特に小規模法人は、

  • 印鑑管理が緩い
  • 役員変更が放置されがち
    という理由で狙われやすい傾向があります。

 司法書士としては、
"不正を防ぐための最低限のコスト"
と考えていただくのが適切だと思います。

 また、外国の方で、家族を日本に呼び寄せる(家族帯同)できるビザとして「経営管理ビザ」取得のために、来られる方もいます。日本でビジネスの実態がない状態で現在問題になっています。アイリスでは、最低限日本語でコミュニケーションがとれる方以外は断ってきました。最近やっと日本語の要件を盛り込む検討がなされているようですが、公証役場の方も、日本語もしゃべれないのにどうやってビジネスを日本でやるのかという点を説明いただけない方が多い」といっていました。ですので、現状では外国の方の法人設立登記そのものを中止しました。

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