会社からこのような相談を受けたとき、まず確認しなければならないことがあります。
【論点】「利益供与とは?会社法違反となるリスクと経営者が知っておくべき実務ポイント」

会社経営において、役員や株主への利益供与はごく自然な行為に思えるかもしれません。しかし、会社法では特定の利益供与が「違法行為」として厳しく禁止されています。特に株主総会の決議に影響を及ぼすような利益の供与は、「会社法第120条」で明確に規制されており、役員個人だけでなく会社そのものが責任を問われるリスクをはらんでいます。
本記事では、利益供与の定義や違法となる典型例、刑事罰を含む法的リスク、そして実務で注意すべき点を、専門家の視点からわかりやすく解説します。経営者や会社役員の皆様にとって、知っておくべき「落とし穴」を未然に防ぐための実践的な情報をお届けします。
【目次】
- 利益供与とは何か?──会社法第120条の概要
- なぜ利益供与が禁止されているのか?
- 違法とされる利益供与の具体例
- 刑事罰や民事責任──リスクの重大性
- 専門家が関与する場面と助言内容
- 適法なインセンティブとの違いとは?
- まとめ:経営判断と法令遵守のバランスをとるために
1. 利益供与とは何か?──会社法第120条の概要

利益供与とは、会社が株主の権利行使(特に議決権行使)に影響を与える目的で、金銭その他の財産上の利益を供与する行為を指します。
会社法第120条は、以下のように規定しています。
「何人も、株主の権利行使に関して、当該株主に対して不当な利益を供与してはならない。」
この「不当な利益」には金銭だけでなく、物品の提供や接待、将来的なポストの確約なども含まれます。
2. なぜ利益供与が禁止されているのか?
株主総会の決議は会社の意思決定の根幹です。この意思決定が、特定の株主に対する利益供与によって歪められると、企業の健全な運営が損なわれ、他の株主の利益も侵害されることになります。
つまり、利益供与禁止の趣旨は「会社の公正な意思決定プロセス」を守ることにあります。
3. 違法とされる利益供与の具体例
以下は、過去の判例や行政指導等で違法と認定された例です。
- 特定株主に高額な接待を行い、議案への賛成を取り付けた
- 株主の親族を会社に採用し、賛否の変更を促した
- 議決権行使書面の提出を条件に商品券を提供した
- 第三者によるM&A提案を否決させるため、配当金の増額を確約した
いずれも、会社の「議決権の公正な行使」を害するものとして、利益供与に該当するとされました。
4. 刑事罰や民事責任──リスクの重大性

会社法第120条に違反すると、以下のような責任が生じ得ます。
- 刑事罰:3年以下の懲役または300万円以下の罰金(会社法第976条)
- 民事責任:株主代表訴訟による損害賠償請求
- 役員責任:善管注意義務違反として解任の理由となり得る
違反が発覚すれば、レピュテーションリスクにも直結し、取引先や金融機関からの信頼を失うことにもつながりかねません。
5. 専門家が関与する場面と助言内容
- 株主総会の招集通知・議案内容の事前チェック
- 第三者割当増資などにおける利益供与リスクの助言
- 議決権行使に関連する金品授受の有無の確認
- 内部規程の整備に関するアドバイス
法律の専門家としては、以下のような場面で助言や手続きを行うことがあります。
利益供与に該当する可能性がある場合は、速やかに弁護士と連携を取るなど、関係専門職が連携してリスクの回避を図ることが重要です。
6. 適法なインセンティブとの違いとは?
たとえば株主優待制度や、株主への公平な配当は「適法な利益」とされます。
しかし、特定の株主の議決権行使に影響を与える目的でのみ行われる利益供与は、たとえ金額が少額であっても違法となる可能性があります。
判断に迷う場面では、文書化と証拠保全を徹底することがトラブル予防に有効です。
7. まとめ:経営判断と法令遵守のバランスをとるために
会社法における利益供与の禁止規定は、形式的なルールではなく、企業の健全性・透明性を守るための本質的なルールです。
経営判断の自由と法令遵守のバランスを保つためには、社内体制の整備と、外部専門家の適切な関与が必要不可欠です。
「これは利益供与に該当するか?」と少しでも迷う場面では、早めに専門家に相談することで、大きなリスクを未然に防ぐことができます。

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