会社を経営している方や、そのご家族から、突然このようなご相談をいただくことがあります。
【司法書士が解説】代表取締役が死亡したらどうなる?取締役会非設置会社の変更登記と必要書類を実務に沿って解説

会社を経営している方や、そのご家族から、突然このようなご相談をいただくことがあります。
「代表取締役が亡くなりました。何から手続きをすればよいでしょうか。」
代表取締役の死亡は、会社にとって非常に大きな出来事です。
金融機関との取引、契約、各種届出など、会社を代表する人がいなくなるため、できるだけ早く新しい代表取締役を選任し、登記を行う必要があります。
一方で、登記実務では「死亡」と「辞任」はまったく異なる手続きです。
「辞任届は必要なのか」「戸籍は添付するのか」「相続人の同意は必要なのか」など、実務では多くの疑問が生じます。
今回は、取締役会非設置会社を前提として、代表取締役が死亡した場合の変更登記について、実務に沿ってわかりやすく解説します。
目次
- 代表取締役が死亡すると会社では何が起こるのか
- 死亡と辞任の決定的な違い
- 新しい代表取締役はどのように選ぶのか
- 登記に必要な書類
- 実務でよくある質問
- まとめ
1 代表取締役が死亡すると会社では何が起こるのか

代表取締役が亡くなると、その時点で代表取締役としての地位だけでなく、取締役としての地位も失います。
これは会社法上、役員は死亡によって当然に退任するためです。
つまり、辞任届や解任決議がなくても、死亡という事実によって役員としての資格を失います。
例えば、
- A 代表取締役
- B 取締役
- C 取締役
という会社で、Aが死亡すると、
- B 取締役
- C 取締役
となります。
会社を代表する者がいなくなるため、新たな代表取締役を選定し、その内容を登記しなければなりません。
2 死亡と辞任の決定的な違い

死亡による退任と辞任では、必要書類も考え方も大きく異なります。
辞任は本人の意思表示によるものです。
そのため、辞任届が必要になります。
一方、死亡は本人の意思とは関係なく法律上当然に退任するため、辞任届は存在しません。
また、死亡した代表取締役本人が書類へ署名・押印することもできません。
この点が辞任との最大の違いです。
実務では、「辞任届がないので登記できないのでは」と心配される方もいますが、そのような心配は不要です。
死亡という事実が確認できれば、変更登記は可能です。
3 新しい代表取締役はどのように選ぶのか

代表取締役が死亡したからといって、自動的に次の代表取締役が決まるわけではありません。
新しい代表取締役は、会社法と定款に従って選定する必要があります。
定款で株主総会選定としている場合
株主総会を開催し、新しい代表取締役を選定します。
定款で取締役の互選としている場合
残っている取締役が互いに協議し、新しい代表取締役を選びます。
ここで重要なのは、「死亡した代表取締役の相続人」が代表取締役を指名できるわけではないということです。
代表取締役の選定は会社の機関が行うものであり、相続人にその権限はありません。
また、死亡した代表取締役が会社の株主でもあった場合は、株式の相続と役員変更は別の法律問題です。
役員の退任は死亡によって当然に生じますが、株式については相続手続が必要になります。
4 登記に必要な書類

死亡による代表取締役変更登記では、会社の状況によって必要書類は異なりますが、一般的には次のような書類を準備します。
- 登記申請書
- 新代表取締役を選定した株主総会議事録又は取締役の互選書
- 新代表取締役の就任承諾書(必要な場合)
- 印鑑届書(新たに会社実印を届け出る場合)
では、死亡を証明する戸籍謄本は必ず必要なのでしょうか。
実は、死亡による退任については、登記官が死亡の事実を確認する必要がある場合を除き、常に戸籍謄本等の添付が求められるわけではありません。
例えば、死亡の事実が株主総会議事録や取締役決定書などから明らかであり、登記官がその内容を認めることができる場合には、別途戸籍の提出を求められないケースもあります。
一方で、登記官から死亡の事実について確認を求められた場合には、戸籍謄本や除籍謄本などの提出を求められることがあります。
実務では、事前に法務局へ確認しておくと安心です。
5 実務でよくある質問

Q1 死亡届や診断書は必要ですか。
通常、死亡診断書を添付することはありません。
死亡の事実を確認するために戸籍関係書類の提出を求められることがあります。
Q2 相続人全員の同意は必要ですか。
必要ありません。
代表取締役の変更は会社の機関決定であり、相続人の同意を要する手続きではありません。
Q3 会社実印はどうなりますか。
死亡した代表取締役が会社実印を保管していた場合には、速やかに会社で回収し、新たな代表取締役へ引き継ぐ必要があります。
紛失している場合には、印鑑届の廃止や改印など、別途手続きが必要になることもあります。
Q4 登記はいつまでに申請しなければなりませんか。
代表取締役の変更登記は、変更の日から2週間以内に申請する必要があります。
死亡の場合は、死亡日が変更年月日となるため、できるだけ早く後任代表取締役を選定し、登記申請を進めることが重要です。
6 まとめ
代表取締役の死亡は、会社にとって突然起こり得る出来事です。
しかし、登記実務では、
- 死亡による当然退任
- 新代表取締役の選定
- 必要書類の準備
- 変更登記
という流れを理解しておけば、落ち着いて対応することができます。
特に重要なのは、「死亡」と「辞任」はまったく異なる制度であるという点です。
辞任届は不要であり、相続人が代表取締役を決めるわけでもありません。
会社法と定款に従って、新たな代表取締役を選定し、適切に変更登記を行うことが、会社の円滑な事業継続につながります。
次回は、「代表取締役を解職する場合」の登記手続きについて解説します。
辞任や死亡とは異なり、会社の意思によって代表権を失わせるケースでは、どのような決議が必要になるのか、取締役としての地位はどうなるのかなど、実務で押さえておきたいポイントを詳しく見ていきましょう。

ピックアップ情報
中小企業の事業承継や世代交代では、このようなケースが少なくありません。
会社からこのような相談を受けたとき、まず確認しなければならないことがあります。
「代表取締役が辞任することになったが、何から手続きを始めればいいのかわからない。」