会社からこのような相談を受けたとき、まず確認しなければならないことがあります。
【司法書士が解説】代表取締役兼取締役が辞任したらどうする?取締役会非設置会社の登記手続きと必要書類を徹底解説

「代表取締役が退任することになりました。」
会社からこのような相談を受けたとき、まず確認しなければならないことがあります。
それは、代表取締役だけを辞任するのか、それとも取締役も辞任するのかという点です。
今回は、その中でも最も基本となる「代表取締役兼取締役が辞任するケース」を解説します。
このケースでは、代表取締役の地位だけでなく取締役としての地位も失うため、会社には新たな代表取締役を選定する必要があります。
一見すると単純な手続きに思えますが、定款の内容や役員構成によって必要な決議や添付書類が変わるため、注意が必要です。
目次
- 「代表取締役兼取締役の辞任」とは
- 最初に確認すべき3つのポイント
- 新しい代表取締役の選定方法
- 登記に必要となる主な書類
- 辞任届の押印で注意すべきこと
- 実務でよくある勘違い
- 次回予告
1 「代表取締役兼取締役の辞任」とは

代表取締役は、会社を代表する権限を持つ取締役です。
そのため、「代表取締役兼取締役が辞任する」とは、
- 代表取締役としての地位
- 取締役としての地位
の両方を同時に失うことを意味します。
例えば、
- A 代表取締役
- B 取締役
- C 取締役
という役員構成で、Aが辞任すると、
- B 取締役
- C 取締役
という体制になります。
会社を代表する者がいなくなるため、新たな代表取締役を選定し、その内容を登記しなければなりません。
2 最初に確認すべき3つのポイント

代表取締役変更登記では、いきなり議事録を作成してはいけません。
まず確認すべきなのは次の3点です。
(1)定款
代表取締役をどの機関が選定するのかを確認します。
- 株主総会で選定
- 取締役の互選
どちらかによって作成する書類が変わります。
(2)現在の役員構成
辞任後も取締役が必要人数を満たしているかを確認します。
例えば、取締役が1名しかいない会社では、その唯一の取締役が辞任すると、後任取締役の選任も必要になります。
一方、複数の取締役が在任している場合には、そのまま後任代表取締役を選定できるケースもあります。
(3)辞任日
辞任日は登記原因日となります。
また、新代表取締役の就任日との関係によっては、会社の代表者が存在しない期間が生じることもあるため、日付の設定には注意が必要です。
実務では、辞任日と就任日を同日にするケースが多く見られます。
3 新しい代表取締役の選定方法

取締役会非設置会社では、新代表取締役の選定方法は定款によって決まります。
株主総会で選定する場合
株主総会を開催し、新たな代表取締役を選定します。
この場合は、株主総会議事録が登記の重要な添付書類になります。
取締役の互選による場合
定款で互選と定められている会社では、残った取締役が互いに代表取締役を選びます。
その結果を書面にした「互選書」や「取締役決定書」が登記書類となります。
どちらの方法であっても、定款に従って手続きを進めることが重要です。
4 登記に必要となる主な書類

ケースによって異なりますが、一般的には次のような書類が必要になります。
- 代表取締役兼取締役の辞任届
- 株主総会議事録または取締役の互選書
- 新代表取締役の就任承諾書(就任承諾の意思が議事録に記載されている場合は省略できることがあります。)
- 印鑑届書(新たに会社実印を届け出る場合)
- 登記申請書
さらに、状況によっては株主リストなどが必要になる場合もあります。
5 辞任届の押印で注意すべきこと

辞任届は、単なる退職届とは異なります。
特に、辞任する者が登記所へ届け出ている代表取締役である場合には、辞任の真正性を確認するため、法務局は押印方法を重視しています。
一般的には、
- 登記所へ届け出ている会社実印による押印
または
- 市区町村へ届け出ている実印による押印と印鑑証明書
が求められます。
会社実印を使用するか、個人の実印を使用するかによって添付書類が異なるため、事前の確認が欠かせません。
6 実務でよくある勘違い

実務では、次のような誤解を見かけることがあります。
「代表取締役が辞めたから、すぐに新代表を決めればいい」
実際には、定款で誰が代表取締役を選ぶのかを確認しなければなりません。
「辞任届さえあれば登記できる」
辞任届だけでは足りません。
新たな代表取締役を選定したことを証する書類も必要になります。
「どの会社でも互選で代表取締役を決められる」
これも誤りです。
定款に株主総会選定と定められている会社では、株主総会の決議が必要になります。
定款の確認を省略してしまうと、補正や再作成が必要になることもあります。
7 次回予告
今回は、「代表取締役兼取締役が辞任するケース」の基本的な流れをご紹介しました。
一方で、実務上もっとも質問が多いのは、**「代表取締役だけ辞任し、取締役には残るケース」**です。
この場合は、議事録への押印方法や印鑑証明書の添付の要否など、通常とは異なる実務上の取扱いがあります。
次回は、この実務で最も間違いやすいケースについて、法務局の運用や商業登記規則も踏まえながら詳しく解説します。

ピックアップ情報
「代表取締役が辞任することになったが、何から手続きを始めればいいのかわからない。」
【第7回】役員変更を放置するとどうなる?過料・信用低下・相続リスクを解説(香川県内対応)
実務の現場では、このご質問をよくいただきます。
しかし結論から言えば、役員変更の放置は"確実にリスクが積み上がる行為"です。
【第6回】名義だけ社長のリスクとは?実態と登記がズレる会社で起きる問題(高松市の実例)
中小企業では、このような状態は決して珍しくありません。
いわゆる「名義だけ社長」と呼ばれるケースです。

