【司法書士が解説】代表取締役を解職したい!取締役会非設置会社の手続きと変更登記を実務に沿って解説
これらはいずれも、代表取締役本人の意思や死亡という事実によって代表権を失うケースでした。

これまでのシリーズでは、
について解説してきました。
これらはいずれも、代表取締役本人の意思や死亡という事実によって代表権を失うケースでした。
一方で、会社の経営方針の変更や役員間の意見の相違などから、「会社として代表取締役を交代させたい」という場面もあります。
このような場合に問題となるのが**「解職」**です。
しかし、ここで一つ重要なポイントがあります。
「代表取締役を解職すること」と「取締役を解任すること」は、まったく別の手続きです。
この違いを理解していないと、誤った決議や登記申請につながるおそれがあります。
今回は、取締役会非設置会社における代表取締役の解職について、会社法の考え方と登記実務の両面から解説します。
目次
1 解職とは何か

「解職」とは、代表取締役としての地位だけを失わせることです。
つまり、
という変更になります。
例えば、
という会社で、Aを解職すると、
という体制になります。
Aは会社を代表する権限を失いますが、取締役としての地位はそのまま残ります。
2 解職と解任は何が違うのか

実務では、この二つの言葉が混同されることがあります。
しかし、その意味は大きく異なります。
解職
代表取締役という役職だけを失うことです。
取締役としての地位は残ります。
解任
取締役そのものを辞めさせることです。
会社法上、取締役の解任は株主総会の決議事項であり、正当な理由なく解任した場合には損害賠償の問題が生じることもあります。
つまり、
代表取締役を辞めさせたいだけなのか。
会社の役員から外したいのか。
この違いを明確にしておく必要があります。
3 代表取締役の解職手続

取締役会非設置会社では、代表取締役の選定方法によって解職手続も異なります。
定款で株主総会選定としている場合
株主総会が代表取締役を選定する会社では、原則として株主総会で新たな代表取締役を選定し、それに伴い従前の代表取締役は代表権を失います。
定款で取締役の互選としている場合
取締役の互選によって代表取締役を定める会社では、取締役の決定により新しい代表取締役を選定することで、従前の代表取締役は代表権を失います。
実務では、「解職決議」という名称よりも、新代表取締役を選定した結果として代表権が移るという形で書類を作成することが多く見られます。
4 登記に必要な書類

一般的には、
などが必要になります。
ここで注意したいのは、「解職届」のような書類は存在しないということです。
辞任であれば辞任届があります。
死亡であれば死亡という事実があります。
しかし、解職は会社の機関決定によって生じるため、その決定内容を記載した議事録などが登記の根拠資料になります。
5 実務で注意したいポイント

「本人が反対していても解職できるのか」
代表取締役の選定機関が適法に決議を行えば、本人が賛成しなくても代表権を失うことがあります。
ただし、手続が定款や会社法に適合していることが前提です。
「会社実印は誰が保管するのか」
代表取締役が交代する場合には、会社実印や印鑑カードの引継ぎも重要です。
現実には、会社実印の返還をめぐってトラブルになるケースもあります。
そのため、代表取締役変更とあわせて、印章や会社関係書類、電子証明書などの引継ぎについても確認しておくことが望ましいでしょう。
「銀行や取引先への届出も忘れずに」
変更登記が終われば手続は完了ではありません。
金融機関、税務署、社会保険、許認可官庁、主要取引先などにも代表者変更の届出が必要になる場合があります。
登記だけでなく、その後の実務まで見据えて準備することが大切です。
6 まとめ
代表取締役の解職は、「代表権を失わせる手続」であり、「取締役を辞めさせる手続」ではありません。
そのため、
が重要になります。
また、登記が完了しても、会社実印の引継ぎや金融機関への届出など、実務上必要となる手続は少なくありません。
代表取締役の変更は、会社の信用や事業運営にも影響を与える重要な手続です。
会社法と登記実務の双方を理解し、適切な対応を進めることが求められます。
次回予告
次回は、「代表取締役の住所変更・氏名変更と変更登記」を解説します。
代表取締役が転居した場合や婚姻等により氏名が変わった場合には、どのような登記が必要になるのでしょうか。
令和6年10月から始まった「代表取締役等住所非表示措置」にも触れながら、実務で押さえておきたいポイントを詳しく解説します。

これらはいずれも、代表取締役本人の意思や死亡という事実によって代表権を失うケースでした。
会社を経営している方や、そのご家族から、突然このようなご相談をいただくことがあります。
中小企業の事業承継や世代交代では、このようなケースが少なくありません。
会社からこのような相談を受けたとき、まず確認しなければならないことがあります。