会社は営業しているのに、なぜ「解散」とされるのか?

2026年09月30日

ここまで2回にわたって、会社の登記についてお話ししてきました。

第1回では、

「その会社、最後に登記したのはいつですか?」

という問いかけをしました。

そして第2回では、

「役員が変わっていなくても、役員変更登記が必要になる場合がある」

ということについて解説しました。

では、もし会社が長期間にわたって登記をしていなかったら、どうなるのでしょうか。

「でも、うちは今も営業しているから大丈夫。」

そう思われる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。

実は、ここに注意していただきたい制度があります。

それが、

「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」

です。

そして、この整理作業の結果として行われるのが、いわゆる

「みなし解散」

です。

今回は、10月頃から始まるこの制度について、できるだけ分かりやすく解説します。

目次

  1. 「みなし解散」とは何ですか?
  2. なぜ営業している会社が対象になるの?
  3. どのような会社が対象になる?
  4. 10月頃から何が始まるの?
  5. 「通知が届かなければ大丈夫」は危険です
  6. みなし解散を避けるためには?
  7. 会社の「これから」を考えるきっかけに
  8. 次回からはいよいよ実務編へ

1.「みなし解散」とは何ですか?

まず、「みなし解散」という言葉から確認しましょう。

会社が解散するというと、

「経営者が廃業を決めた」

「株主総会で解散を決議した」

というケースを思い浮かべる方が多いと思います。

しかし、会社法には、一定期間登記がされていない会社について、法律上「解散したものとみなす」制度があります。

これが、

「みなし解散」

です。

法務局では、長期間にわたって登記がされていない会社・法人を整理するため、一定の期間ごとに「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」を行っています。

これは、長期間活動実態がない会社などをそのまま登記簿上に残し続けることによる問題を解消するための制度です。

2.なぜ営業している会社が対象になるの?

ここで、

「でも、うちの会社は営業している。なぜ解散なんてされるの?」

という疑問が出てくると思います。

実は、この制度で重要なのは、

「現在営業しているかどうか」だけではありません。

長期間にわたって登記がされていないという事実が、対象となるかどうかの一つの基準になります。

つまり、

「売上がある」

「従業員がいる」

「取引先と普通に仕事をしている」

「銀行口座を使っている」

といった事情だけで、自動的に整理作業の対象から外れるわけではありません。

だからこそ、

「営業しているから、自分の会社には関係ない」

と考えてしまうことが危険なのです。

3.どのような会社が対象になる?

株式会社の場合、原則として、

最後の登記から12年を経過している会社

が休眠会社の整理作業の対象となります。

また、一般社団法人・一般財団法人については、

最後の登記から5年を経過している法人

が対象となります。

ここで注意したいのは、

「会社を設立してから12年」ではない

ということです。

基準になるのは、

「最後に登記をしてから何年経っているか」

です。

例えば、会社を設立してから15年経っていても、その間に役員変更などの登記を適切に行っていれば、「最後の登記から12年」という基準には該当しません。

逆に、会社を設立してから12年以上経過していて、設立後一度も登記をしていないような場合には、注意が必要です。

4.10月頃から何が始まるの?

休眠会社・休眠一般法人の整理作業では、対象となる会社・法人について、法務大臣による公告が行われます。

そして、対象となる法人には、登記所から通知書が送付されます。

ここで重要なのが、

「通知が来たら終わり」ではない

ということです。

通知を受けた会社が、まだ事業を廃止していないのであれば、必要な登記を申請する、または「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があります。

必要な対応をしないまま一定期間が経過すると、

みなし解散の登記

がされることになります。

つまり、

通知

↓

必要な登記・届出

↓

対応しない

↓

みなし解散

という流れです。

だからこそ、通知が届いてから慌てるのではなく、事前に自社の登記状況を確認しておくことが大切なのです。

5.「通知が届かなければ大丈夫」は危険です

ここも非常に重要なポイントです。

「対象になっている会社には通知が届くなら、通知が来なければ大丈夫でしょう。」

そう考えてしまうかもしれません。

しかし、通知が何らかの理由で届かなかった場合でも、それだけで対象から外れるわけではありません。

法務省も、通知書が何らかの理由で届かなかった場合であっても、公告された内容を確認し、必要な対応をすることが重要であると案内しています。

つまり、

「通知が届かなかった=自分の会社は関係ない」

とは限りません。

会社の本店所在地が登記簿上の住所と違っている場合などもあります。

「そういえば、会社の住所変更登記をしていない」

という会社は、この点にも注意が必要です。

6.みなし解散を避けるためには?

では、どうすればよいのでしょうか。

まずは、

自社の登記簿を確認すること

です。

特に、

  • 最後に登記をしたのはいつか
  • 最後の登記は何だったのか
  • 現在の役員と登記簿上の役員が一致しているか
  • 本店所在地は現在の住所になっているか
  • 長期間、役員変更登記をしていないのではないか

という点を確認してみましょう。

もし長期間登記をしていないのであれば、

「何も問題が起きていないから、そのままでいい」

と考えるのではなく、一度司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

7.会社の「これから」を考えるきっかけに

ここまで「みなし解散」の制度について説明してきました。

しかし、私はこの機会にもう一つ考えていただきたいことがあります。

それは、

「この会社を、これからどうしていくのか?」

ということです。

会社を設立したときには、きっと何らかの目的や夢があったはずです。

しかし、10年、20年と時間が経てば、経営者自身の年齢も変わります。

家族の状況も変わります。

従業員も変わります。

事業環境も変わります。

そして、

「この会社を子どもに引き継ぐのか」

「第三者に承継するのか」

「しばらく事業を続けるのか」

「将来的には廃業するのか」

という問題も出てきます。

登記を確認することは、単なる事務手続ではありません。

会社の現在地を確認し、

会社の未来を考えるきっかけ

にもなるのです。

8.次回からはいよいよ「実務編」です

ここまでの3回の記事では、

「会社の登記を確認する」

というところから、

「役員変更登記」

そして、

「みなし解散」

へと順番にお話ししてきました。

いよいよ10月からは、実際の通知に備えた具体的な話に入ります。

次回は、

「今年も始まります。『みなし解散』の通知にご注意ください」

をテーマに、

  • いつ頃通知が届くのか
  • どのような会社が対象になるのか
  • 通知が届いたら何を確認するのか
  • 「まだ事業を廃止していない」旨の届出とは何か
  • 必要な登記とは何か

など、より具体的に解説します。

「うちの会社は大丈夫」

と思っている今だからこそ、一度確認してみてください。

会社の未来を守るための第一歩は、

「現在の会社の状態を知ること」

から始まります。

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