「まだ事業を廃止していない」届出だけで大丈夫?

2026年10月21日

前回は、

「『みなし解散』の通知が届いたら、まず何をする?」

というテーマで、通知が届いたときの具体的な対応についてお話ししました。

通知を確認すると、

「うちの会社は今も営業しているから、
『まだ事業を廃止していない』という届出を出せばいいんだな」

と考える方もいらっしゃると思います。

もちろん、その理解は間違いではありません。

実際に事業を継続している会社で、必要な登記をすぐに行わない場合には、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をすることで、その年度の休眠会社整理作業の対象から外れることができます。

しかし――。

ここで一つ、大切な注意点があります。

それは、

「届出を出したから、会社の登記問題が解決した」わけではない

ということです。

今回は、この点について詳しく見ていきましょう。

目次

  1. 「まだ事業を廃止していない」届出とは?
  2. 届出をすれば、その年は「みなし解散」されない
  3. しかし、登記の放置が解消されるわけではない
  4. 翌年も「みなし解散」の対象になる可能性がある
  5. 登記を放置していると「過料」の問題もある
  6. 届出は「応急処置」と考える
  7. 会社の未来を考えるきっかけに

1.「まだ事業を廃止していない」届出とは?

「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」では、長期間登記がされていない会社などについて、法務大臣による公告と登記所からの通知が行われます。

株式会社の場合、原則として最後の登記から12年を経過している会社が対象となります。

対象となった会社が、公告から2か月以内に、

  • 必要な登記を申請する
  • 「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする

のいずれも行わなかった場合、解散したものとみなされ、登記官が職権で解散の登記をします。

つまり、

「うちは今も営業しています」

という会社であれば、その意思を登記所に伝えるための手続きが、

「まだ事業を廃止していない」旨の届出です。

2.届出をすれば、その年は「みなし解散」されない

では、この届出をするとどうなるのでしょうか。

公告から2か月以内に適切に届出をすれば、その年度の休眠会社整理作業の対象から外れることになります。

したがって、

「通知が届いたけれど、すぐに役員変更登記などをする時間がない」

という場合には、非常に重要な手続きです。

ただし、ここで注意してください。

届出は、会社の登記を更新する手続きではありません。

あくまでも、

「この会社は現在も事業を継続しています」

と伝えるための手続きです。

登記簿上の役員や本店所在地などに変更が必要なのに、その登記をしていないという問題そのものが消えるわけではありません。

3.しかし、登記の放置が解消されるわけではない

例えば、こんな会社を考えてみましょう。

10年以上前に役員変更登記をしたものの、その後は代表者も役員も変わっていない。

会社は現在も営業している。

この会社に「みなし解散」の通知が届いたとします。

そこで、

「まだ事業を廃止していません」

という届出を提出しました。

これで、その年度のみなし解散は回避できます。

しかし、

「役員変更登記が不要になった」わけではありません。

会社法上、役員変更など登記すべき事項については、原則としてその変更が生じたときから2週間以内に登記する必要があります。期限を過ぎてから登記すること自体は可能ですが、代表者が過料に処せられる可能性があります。

つまり、

届出をしたことと、登記義務を果たしたことは別問題

なのです。

4.翌年も「みなし解散」の対象になる可能性がある

ここが今回、一番お伝えしたいポイントです。

法務局も明確に、

「まだ事業を廃止していない」旨の届出をした場合であっても、必要な登記申請を行わない限り、翌年も休眠会社・休眠一般法人の整理作業の対象となる

と案内しています。

つまり、

今年、

「まだ営業しています!」

と届出をした。

↓

今年はみなし解散を免れた。

↓

でも、必要な登記をしなかった。

↓

翌年、再び対象になる可能性がある。

ということです。

したがって、

「届出を出せば毎年大丈夫」

というものではありません。

届出は、あくまでその年度の整理作業に対する対応です。

5.登記を放置していると「過料」の問題もある

さらに注意したいのが「過料」です。

例えば役員変更登記を長期間放置していた場合、

「みなし解散の通知が来たから、慌てて役員変更登記をした」

としても、過去に登記を怠っていた事実まで消えるわけではありません。

法務局の案内でも、登記を怠った場合には、裁判所から過料に処せられる可能性があるとされています。

もちろん、

「通知が来た=必ず過料になる」

という意味ではありません。

しかし、

「今まで何も言われなかったから大丈夫」

と考えるのは危険です。

6.届出は「応急処置」と考える

では、どう考えればいいのでしょうか。

私は、

「まだ事業を廃止していない」旨の届出は、応急処置

と考えると分かりやすいと思います。

まず、

会社を存続させる意思を示す。

そして、そのうえで、

  • 役員は現在の状態になっているか
  • 役員の任期はどうなっているか
  • 本店所在地は現在の住所になっているか
  • 商号は現在のものか
  • 目的は現在の事業内容と合っているか
  • 過去に必要な登記を忘れていないか

などを確認する。

そして、必要な登記があるのであれば、きちんと登記をする。

これが本来の対応です。

7.会社の未来を考えるきっかけに

実は、「みなし解散」の通知は、単なる行政上の手続きではありません。

会社にとって、

「これから、この会社をどうしていくのか?」

を考えるきっかけにもなります。

例えば、

「今後も10年、20年と事業を続けていく」

のであれば、役員や本店、事業目的などを整理し、会社の現在の姿と登記簿を一致させておくことが重要です。

一方で、

「社長も高齢になってきた」

「後継者が決まっていない」

「事業を縮小している」

「会社を誰かに引き継ぎたい」

という場合には、単に登記を更新するだけではなく、

事業承継や会社の将来そのものを考える必要があります。

そして、

「もう事業を続ける予定がない」

というのであれば、逆に会社を放置するのではなく、解散・清算という正式な手続きを検討することになります。

まとめ

「まだ事業を廃止していない」旨の届出は、みなし解散を避けるための重要な手続きです。

しかし、

届出=登記問題の解決

ではありません。

届出をしただけでは、必要な役員変更登記などが完了したことにはならず、必要な登記をしないままでは翌年度も休眠会社整理作業の対象になる可能性があります。

だからこそ、

「届出をして終わり」ではなく、
「届出をきっかけに会社の状態を見直す」

ことが大切です。

会社も人と同じです。

長い間、何も確認しないままにしていると、いつの間にか「現在の姿」と「記録されている姿」にズレが生じてしまいます。

そして、いよいよ次回は、このシリーズの最後です。

もし、

「みなし解散の登記がされてしまったら、もう会社を続けることはできないのか?」

という疑問を持たれた方もいるでしょう。

実は、みなし解散になった後でも、一定の条件のもとで会社を継続することは可能です。

次回は、

「みなし解散された会社は、もう復活できないの?」

をテーマに、会社を続けるための手続きについて解説します。

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解散・清算結了登記

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